本年2月末から店頭FX業者の法人口座のレバレッジが規制されたというので、いろいろと調べて回っているうちになかなか興味深い数字を見つけることができました。
それが国内の金融先物取引協会が発表している「ロスカット未収金発生口座数」の月次の推移です。
暴落が起きると個人投資家は証拠金以上の損失を抱えることに
この金融先物取引業協会が発表している月次のロスカット等未収金発生状況、つまり強制ロスカットが執行されたにもかかわらず、証拠金を超える損失を出してしまった個人および法人投資家の数と発生金額はなかなか興味深い結果になっていることがわかるのです。
よく個人投資家の中には業者が設定している強制ロスカットが存在するのだから投入した証拠金以上の損失を投資家がかかえることなどないと豪語する方が多いですし、一部のFXサイトなどではまことしやかにそうした内容が記載されているのを目にしますが、実際のところはその状況はまったく異なっており、多くの投資家が個人、法人にかかわらず相場の暴落時に投入証拠金以上の損失を抱えることになっていることが非常によく理解できます。
この推移でみますと昨年6月の「BREXIT」のときの暴落でもかなりの件数がでており、強制ロスカットが履行されても一時的にスプレッドが開きすぎて、ロスカットのポイントが証拠金を上回る損失を出したか、値がとんでしまいついたロスカットが事前の設定レベルより大幅に下回るといったことが起きているという厳然たる事実を示しているといえます。
また昨年10月はクリントン候補の問題が顕在化して相場が大きく下落した時期にも同様のことがおきていることが窺えます。どうも相場に一定のトレンドが出ている最中はほとんどこうした損失は出ないようですが、やはり乱高下したりいきなり暴落したりする場合には、結構な額の未収金がでていることは明確です。
昨年6月のケースですと損害額は1億9355万あまりに対して発生個人投資家数は「2047件」ですからひとりあたり9万5000円程度となりますが、実際には特定の個人で大きな損失を出している可能性が高く、だからこそ未収金になっているものと思われます。
ストップロスさえ置いておけば安全というわけでもない
為替相場は暴落が起きてもストップロスさえ設定してあれば安心という声をよく聞きますが、実はこのストップロスも置き方を間違えるとまったく機能しなくなることがあるためかなりの注意が必要です。
通常個人投資家が行っているように売買のポイントから上や下に30PIPS程度離れたところに置くストップロスはよほどのことがない限り、スプレッドが広がり始めてもだいたいは確実につくことになります。
しかしながら80銭から1円以上離れたところにストップロスをおきますと、スプレッド自体が瞬間的に1円開くといった事態に追い込まれた場合想定金額よりも大幅に損失をかかえて損切りになることもありますので、予想外の損失をかかえることになってしまうのです。
残念ながら国内の業者は証拠金額を越えた損失は追わないという海外の業者に設定されているゼロカットシステムを導入していませんので、損が出ればどこまでも追いかけて取り立てを食らうことになります。
したがってこのストップロスの置き方からよく考えなくてはなりません。為替相場は4月に入ってから米中首脳会談や米国の北朝鮮攻撃などのリスクを抱えているため、なんとも重たい展開が続いています。
とくに北朝鮮と米国が一戦を構える事態ともなれば相場が大幅下落しかねない状況であり、ここでお伝えしているようなことが現実に起こる可能性もかなり高くなります。
こうしたことは決してありえないことではなく、いつでも起きるリスクという認識が必要になります。この春先思わぬ場面で役にたつことになるのかもしれません。あらかじめしっかり頭に入れておくことをお勧めします。
(この記事を書いた人:今市太郎)