米中首脳会談はほとんどその中身がどんなものだったかわからないままに終了し、100日計画だけ策定することが決定した次第ですが、北朝鮮についてどのような話がついたのかもわからない状況となっています。
そんな中で今週末の15日は金日成生誕105周年ということで、北朝鮮側からまたしてもなにかのアクションが行われる可能性が指摘されはじめています。
ICBM発射なら米国は即攻撃という観測も
Photo AFP BB
北朝鮮から発射されるミサイルは、当初は結構精度の低いもので飛んだといっても失敗と区別がつかないようなレベルでしたが、いよいよ大陸間弾道弾ミサイルも発射できる力がついてきているとの見方が強まっています。
このいわゆるICBMはしっかりとした技術が確立すれば米国本土まで到達するものだけにトランプがイラつくのもよくわかる話で、今回この105周年行事としてICBMを発射することがあれば、ほぼ同時に米国が北朝鮮を攻撃する可能性も高まってきていることが欧米のメディアを通じて報道されはじめており、為替もこの時期についてはかなり慎重に取り組むことが必要になりそうです。
本来紛争当事国の通貨は売られるものだが日本円の場合は?
「地政学リスク」が発生した場合その紛争当事国と隣国の通貨というのは通常売られるものですが、北朝鮮でまさかの事態が発生した場合ドル円の動きはかなり微妙なものになる可能性があります。
日本が直接的に攻撃の対象になり大打撃を受けて経済が回らなくなるような危機的な状況に陥ったり、原発が攻撃の対象になって壊滅的な被害がでるといった場合は確かに国の破滅に近い状況ですから、円が買われるようなことはありえませんが、北朝鮮に対して米国が攻撃を仕掛けた場合、日本株を海外勢が売りに回ると連動してドル円も売られる可能性は極めて高く、有事に円売りだと思い込んでいると飛んだ損失を被りかねない状況であることは意識しておく必要があります。
微妙なのは日本海側に大量に難民が押し寄せ、その累計が100万人を超えるといった事態になった場合、当事国は北朝鮮ではなく日本に移ることになりますから、こうした状況で市場がリスク回避で円をどうするのかは具体的な状況次第ということが考えられます。
とくにリスク回避の初動は人為的なものというよりは「アルゴリズム」が反応するのがほとんどですから、まずドル円を売るという可能性は高くなることが考えられます。
なにしろ東日本大震災の直後であってもドル円は海外からのレパトリ需要で極度の円高になった経緯があるぐらいですから、常識で考えたロジックがそのまま市場で走るかどうかは起こってみないとわからない点だけは相当注意が必要です。
また、ここのところクロス円の下落がドル円に大きく響く動きがでてきており、リスク回避で資源国通貨などが売り込まれることになるとクロス円の影響をドル円が受けるといったリスクについても考えておかなくてはなりません。
日本は朝鮮戦争以来、ごく近隣国での地政学リスクの影響を受けたことがないだけにこうした不測の事態に陥ったときに相場がどうなるのかあまり意識できていない個人投資家が多そうですが、基本は投機筋の動きが初動を決することになると思われますので、まさかの事態で誤った判断をする個人投資家が相場の乱高下に巻き込まれそうな気配です。
イラク戦争などの場合には噂でドルが売られていざ戦争がはじまるとドルが大きく買い戻されるといったケースも実際に起きていますが、今回北朝鮮起因のリスクの場合、遠い国での話しではなく当事国になる可能性があることが非常に判断を難しくすることになりそうです。
いずれにしてもドル円をロングで持つ場合にはまさかのときのために必ずストップロスを入れておく必要がありそうです。今週はまさにそんな厳戒態勢の一週間になるのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)