4月の29日でトランプ相場が始まってからちょうど「100日」が経過することになります。
しかし事前の期待とは裏腹に1月の就任以来為替のほうは方向感がなく、テクニカル的にはさらに下落しそうな雰囲気になりながらも、投機筋と個人投資家だけで回るドル円であることから売りが溜まりすぎると何度もショートカバーを繰り返す状況で、どうもこのまま一気に下落することにもならなさそうな動きが続いています。
トランプ相場がどこからはじまったかで多少ぶれはありますが、101.182円を基点として1189.665円の年末12月15日の高値までの上昇からの戻りでいいますと、半値押しは抜けてぎりぎり61.8%戻しに近いところまではやってしまったことから、一旦多少の戻りを試すことになりそうな気配となっています。
市場の勝手な期待は見事に破られる状況に
これまでのスキームを全てぶち破りかねないと思わせるトランプ発言に相場が大きく反応して買いあがったものの、それに具体的な政策がなにもついてこないことで半値以上下押しをしてしまったのは、必ずしもトランプ政権のせいとはいえません。
これはある意味で仕方ない下げとも言えますが、問題はここからで、メキシコの壁とか中国を為替操作国にするとか国境税実施などという突拍子もない政策は横に置いておくとしても、大型減税が実施できるのか、その前提となる「オバマケア」の改定案が着地するのか、さらに大規模なインフラ投資が行われるのかといった辺りのことが今年中に着地できない見通しとなれば期待はすべて剥落することは間違いありません。
「ムニューシン財務長官」が減税を口にすると、まだ市場は期待でドルを買い上げる動きこそ出てきてはいるものの、この先進捗がはかられなくなれば、こうしが動きすら出てこなくなる可能性が高まります。
まだ政権発足からたった100日ですから、拙速に評価すること自体がむずかしく、さらにもう少し猶予期間が必要になることと思われますが、来年には中間選挙を控えているわけですから、のんびり構えているわけにもいかない状況です。
市場は一方でかなりトランプの政策がうまくいかないことに飽きを感じはじめていますから、期待で上昇するという動きは徐々に薄れることになるものと思われます。
つまりよほどの内容が開示されない限り、トランプ政策期待で相場が上向くことは考えにくくなってきているといえるのです。このプロセスはオバマの期待が大きく剥落していった動きとかなり似てきており、やがて市場は何も反応しなくなることを示唆しています。
今年Sell in Mayが機能するのかどうかに大注目
2017年は7の年といわれ、10年に一度米国市場はロクなことが起きない「アノマリー」が存在します。
しかし不思議なことにこの10年に1度暴落がある年というのは4月末からなぜか株式市場が上昇しはじめ7月ぐらいにピークをつけるまでは上方向に相場が走ることが多くなります。
日本もそうでしたがバブル相場は最後大きく上昇して壊滅的に破裂するわけですから、足元で停滞している米国の株式相場も暴落するなら夏まで走っても確かにおかしくはない状況です。
こうなると今年に限っては毎年言われる「Sell in May」が機能しなくなる可能性もあり、見極めが必要になります。
フランスの大統領選や北朝鮮リスクが一服した5月初旬以降に果たして米国の株式相場がどう動くのか次第では、為替もここからいきなり下落するのではなく、多少の戻りを試して、その後に下方向に大きく動くリスクが高まることになるのかもしれません。
実際、米国経済はトランプが政策を打ち出してこなくても十分好景気を保っていると言われ、高値に張り付いた株式市場が簡単に大幅下落するとは思えないとの見方もあり、相場の見極めはむずかしくなっています。
ドル円は今回、地政学リスクにトランプ政策期待剥落が重なって少なくとも105円方向に下落することが危惧されましたが、いきなり下落に走るところまではいかなかったようで、次はみながドル円ショートをやめたくなるレベルが改めてドル円の売り場となりそうな状況です。
現状で見ていますと110円あたりはかなりその目標値になってくるのではないでしょうか?
(この記事を書いた人:今市太郎)