26日に発表となった米国の税制改革案は、市場の予想通り法人税率を35%から15%に引き下げるとともに、小規模な事業や個人事業主を含むパススルー事業への最高税率についても同様に15%に引き下げるといった内容で、個人の所得税率は3段階へと簡素化することなども織り込まれる内容となりました。
その一方でキャピタルゲイン課税20%復活なども登場することになりそうで、株式市場では結果的にこれを嫌気した下げが示現することとなりました。
また全体としての実現の可能性がいまひとつよくわからないことも手伝って、為替市場ではドル円が111円ぎりぎりの水準でNYタイムを終了するというかなり微妙な市場となっています。
全体としてはやはり失望感が高かったのは事実のようで、税制改革をネタにしてドル円相場が上昇することはどうやら無さそうな展開です。
現実に26日ドル円は長い上髭を出した終了する形となり、ここから上へも簡単には上昇しないことを改めて市場に示すこととなってしまいました。
一時的に下落のトレンドは上方向に転換したかのように見えましたが、ゴールデンウイークを控えて、ドル円相場は横展開が継続しそうな状況です。
トランプ政権の突拍子もない公約はすべてどこかへ消えていった?
グローバリストと呼ばれるネオコン一派が政権内でイニシアチブをとるようになってから突拍子もないようなトランプの政策内容が須らく影を潜めるようになってきていますが、今回の税制改革においても国境税の話がまったく語られなくなってしまったことから、向こう10年の減税原資をこの税金の導入でまかなうとしたプランはいきなり頓挫することとなっていまいました。
もはやメキシコの国境の壁の話も話題には上らなくなってきていますし、すでに発足100日にしてトランプ政策はポピュリズム主体で想像以上に無難な方向へ舵を切りなおそうとしていることが見え始めています。
政策策定部隊が希薄なトランプ政権
オバマケアの代替案のときにも強く感じたことですが、大言壮語をぶちまける親分は存在してもそれに応えて細かいプランを短期間に練っていく政策策定部隊がトランプ政権には存在しない印象がかなり強くなってきています。
今回の税制改革も詳細は議会にぶん投げる形となるはずですから、あとは共和党の議員がどこまでつめていくか次第の状況に見えますが、当初の驚くべきトランプ政策といったものはかなり影をひそめるようになっており、すでにトランプ相場と呼ばれた上昇相場は完全に終焉している可能性も高まりつつあります。
株価が現状を維持できなくなってきますと、再度ドル円も下方向を意識する展開になりますし、108円台を割らなかったことで一旦は下値を固めたかのようにみえたドル円相場もここからはまだよくわからない状況といえます。
7のつく相場は6月後半ぐらいまで株式市場が走り続けるというアノマリーがあることから、今年もこのアノマリーがワークするのかどうかがここからまず最初の確認ポイントとなりますが、もしこれが今年には当てはまらないということになれば、またしても異なる方向感を視野に入れざるを得なくなりそうで、向こう2週間あまりはかなり注意が必要となりそうです。
ドル円の月足20ヶ月移動平均線は足元では112.087円レベルを走っていますが、今月の終値もこれを抜けないとなると5月相場はまたしても下方向を意識する展開になるだけにちょうど今週の相場の動きが重要な局面を迎えます。
月曜日からの動きでは112円台も十分に回復余地があるものと思われましたが、長い上髭の登場でドル円はまたまた不明確なところを彷徨い始めています。
ただ足元ではドル円のショートもほとんどはけていないように見えますので、闇雲に下落していく相場にはなりそうもなく、当面横展開でつぎなるテーマを待つことになるのかも知れません。
(この記事を書いた人:今市太郎)