このコラムでもご紹介していますように「VIX指数」が急激に下がるなど金融市場全体が楽観相場に移行しつつあることはどうやら間違いのない状況といえます。
こうした相場では多くの投資家が不測の大幅下落をまったく想定できておらず、ヘッジのためのオプションも購入していなければストップロスも置かないといった甘い売買を続けていることから、突然相場が反転して下落をはじめるとパニックが起き、市場が一斉に売りに傾斜することから必要以上の大幅下落を示現しやすくなるのが過去の事例からも容易にうかがい知ることができます。
ただ、暴落があるかもしれないと常にびくびくしていたのでは為替の取引にはなりませんし、何より暴落のタイミングを予想するのは上昇タイミングを予想するよりはるかに難しいものになりますから、個人投資家がこれをずばり的中させるのは事実上無理な状況です。そこでこんな時期の相場でうまく利用してみたいのがトレーリングストップの活用ということになります。
トレーリングストップとは?
「トレーリングストップ注文」は、一般的には「トレール注文」などとも呼ばれますが、この注文方法は、一度ポジションを持ったあとの決済注文方法として逆指値、つまりストップロス注文をトレールすることができるのが最大の特徴となります。
追尾というのがトレールの意味になりますが、この注文方法を利用すればロングをとった場合には逆指値が為替レートの変動に合わせて切り上がっていくことができるのでです。
逆にショートにした場合には逆指値は切り下げる動きとなります。一言で言えば逆指値の決済注文が、実勢レートが有利な方向に動いた場合に自動的に相場に追尾させることができるのです。
実際に使ってみるとどうなるか?
たとえば直近のドル円相場で103円でドル円を購入し、30銭下にストップロスをおいたトレール注文を行ったとします。
購入したロングポジションがまったく上がらずにそのまま下落すれば102.700円で逆指値が履行しますから、単純に損切りが履行されておしまいですが、順調に上昇をはじめた場合、一般的には設定した値幅以上に上昇した段階でこのトレーリングストップ注文が働きはじめることになります。
この設定の場合103.300円を超えたところから「トレーリングストップ」が作動しはじめますので、このまま103.700円まで上昇して、逆に下落を始めた場合には103.400円で損切りとなり購入価格から考えれば40銭の利益がでることになるわけです。
さらに相場が上昇して104.300円まで上がったときにはストップロスの履行価格も104円までつれて上昇することになりますから相場が下落しはじめると104円で損切りということになります。
もちろん成り行きで相場を見ていて104.300円がついたところで利益確定することも可能ですが、夜中であるとか外出時などリアルタイムで相場を見ていないときにできるだけ利益を確保してリカクしたいと思ったときにはこの方法は非常にいいやり方であるといえます。
先週のドル円の動きで考えれば、103円で購入したポジションは30銭幅のトレーリングストップを置いておけば104.030円レベルで損切りがついたはずで、最大の利益は確保できないものの、単純な損切りを置いておくよりは断然大きな利益を確保できたことになります。
もちろんこの方法がワークするのはしっかりと相場が上昇するか下落するといったトレンドがでているときが最適で、狭いレンジ相場で価格が上下するようなときにはほとんど有効利用になることはありません。
足元のドル円は114.300円レベルまで上昇しているわけですから、さらに115円を超える方向まで上昇しそうな雰囲気濃厚ですが、実際の相場では104.300円レベルに到達してから2回とも大きく反落する動きをとっていますので、一方的に相場は上昇してはいないわけです。
こんなときにトレーリングストップを設定しておけば、見ていなくても利益幅のあるリカクが可能になるのです。上昇が期待できても自信が持てない今の相場状況や、市場が総楽観で逆方向になにか置き始めるとパニック売りがでそうな状況の場合にはこの売買手法はかなり有効な方法になるものと思われます。
これまで使ってみたことのない方は、今のうちに慣れておくとこの先大きく役立つことになるかも知れません。
(この記事を書いた人:今市太郎)