12日に起きた世界同時多発的なサイバー攻撃で多くの民間企業のPCが標的とされ、かなりの被害が拡大しつつありますが、事情の飲み込めない為替市場は意外に何処吹く風の状況で、その深刻さに対するリスク感応度が低い状況です。
今回利用されたランサムウエアはいわゆる身代金を要求するウイルスで、一件について300ドル程度の支払いを求めてくることから、多くの企業が仕方なく支払いに応じるケースも増えているようですが、サイバー攻撃というのは元を正せば戦争につながるものですから、市場はもっと「リスクオフ」に傾斜してもいい話で、被害の甚大さが顕在化してはじめてその深刻さを理解した「リスクオフ」の動きになることに注意が必要となりそうです。
個人のPCでも知らないメールは開封しないことが基本
「WannaCry」(泣きたくなる)と呼ばれる今回のランサムウエアは、パソコンの内部データにロックをかけ、文字を暗号化して読めなくするなどして、復元のための金銭を要求するものとなっています。
まかりまちがえば個人のPCにもやってくることが十分に想定されるだけに、足元ではとにかく知らない人物や組織からのメールを迂闊にあけないことが重要になりそうです。
深刻なのはFXの取引ができなくなること
個人投資家にとってもっとも深刻なのはPCなどFXの売買ツールにアクセスしているデバイスが使えなくなることで、取引ができなくなった場合に、ストップロスなどを入れておかないと莫大な損失を抱える可能性がある点には相当な注意が必要となります。
通常平時であれば相場が1日に上下するのはそれほど大きなものにはなりませんが、ポンド円のように普通にしていてもかなり上下に振幅するような通貨ペアの場合にはなにが起きてもいいようにしっかりストップロスだけは置いておく必要があります。
また不測の事態に備えて予備のデバイスを用意しておくといった対抗措置もとっておきませんと、思わぬ損失を抱えることになりかねない状況です。
とくにこのサイバー攻撃を為替市場がやっと感知してリスクオフのような状況になりますと一体どこの通貨が買われることになるのか大きな問題になりそうですが、「アルゴリズム」が動いている限りは円やスイスフランに逃げ場をもとめる資金が増えるはずで、異常に円高が進むことでドル円などのロングが大打撃を受ける可能性も出てきそうです。
取引不能で損して、相場がさらに追い討ちをかけてきたのではまったくシャレになりませんので、まさかのときに差備えることだけは個人投資家レベルでもやっておきたいところです。
身代金がビットコインというのも問題になりそう
今回の攻撃の対象は実に99カ国に及んでおり、だれがやらかしているのかが非常に大きな問題となっていますが、身代金を「ビットコイン」で支払うことを要求している点も大きな問題になりそうです。
つまり特定の国に紐付かない仮想通貨がこのような戦争に近い犯罪の身代金支払いに使われ、それがまったく特定できないことに世界各国が懸念を示すのは当然のことで、一段と利用に制限がかかるリスクも高くなりそうな嫌な予感がしてきます。
結局仮想通貨がもっとも犯罪に使われやすいということになれば、先進国が共同してその利用に制限をつけてくる可能性は極めて高く、価格が高騰している「ビットコイン」自体が急落するといった異なる金融リスクにも相当気をつける必要がありそうです。
いずれにしてもこうした事態に対して為替相場のリスク感応度は著しく悪くなっていますので、事実が発覚してとんでもない動きになったときに損がでないような取引を心かげて起きたいところです。
誰が仕掛けているのかが判らないことからリスクヘッジの仕方が非常に難しいのが現状ですが、驚愕の事実が暴露された場合には相当相場が動くことも覚悟しておかなくてはならず、想像以上に大きな問題になりそうな気配です。
(この記事を書いた人:今市太郎)