5月17日、18日とドル円を中心に大きな下落を余儀なくされたトランプ起因のロシアゲート問題ですが、「ウォールストリート」や米国の財界などを中心としてトランプはそれほど悪くないし弾劾などには至らないとする楽観論が出回り始めています。
さすがに米国にリアルに居住していて、くまなくメディアを見ているわけでもありませんし、有権者をはじめとする微妙なセンチメントがどうなのかも正確にはわからないことから、こうした楽観論がどこまで信憑性があるのかについてはいまひとつ判りません。
しかし、トランプが本質的にいい人間か悪い人間かの判断は別としても相場の動き方を考えたときには多少は意識せざるをえないのではないかという気もしてくる状況です。現実に足元で出始めいる見方をいくつかご紹介してみますと次のようなものになります。
メディアは騒ぐが犯罪性は立証できないとする説
確かに米国のメディアはトランプ政権発足時から徹底的にトランプと対立しあっていきましたから、いよいよ100日を越えて本格的に攻撃を開始していることは間違いない状況です。
ただ連日攻撃してきている内容にどのぐらいの信憑性があるのかは確かに不明確であり、具体的に犯罪性を立証できないのではないかといった見方も出始めていることは確かです。
24日には前長官の「コミー氏」が議会証言しますので、その一部の真偽のほどが明確になる可能性が高まることになり、ここで相場がかなり動くことだけは覚悟しておきたいところです。
弾劾にまで至っても有罪にはならない説
これもかなり目立ち始めていますが、そもそも弾劾に至るまでに米国の下院と上院でまとまった数の賛成が取れない限りは弾劾には至らず、かなりそのハードルは高いとする説です。
過去に事例がないということだけで言えば、簡単でないことは確かですが、ここのところ政治の世界ではまさかが多いですから、この見方が本当に正しいかどうかはまったくよくわかりません。
トランプがいたから株価が上昇したと擁護する動き
確かに人格上の問題は感じながらも、ここまで米国の株価が上昇したのはトランプのおかげで、今実業界も個人投資家も株価の下落を望んではいない。つまりトランプはこのまま続投して具体的な政策の実現を継続すべきであるとする説です。
まあ株価を下げたくないという非常に利己的な発想から言えば、こうした声が高まるのもわからなくはないものです。今回の下落はトランプのせいになっているが相場は調整のきっかけを探っていただけで、必ずしもトランプのせいではないとする好意的な見方も登場しています。
多くのファンド勢はむしろこうした発想をもっているという話も飛び出してきている状況です。
トランプが辞任に追い込まれてもペンスがいれば大丈夫説
仮に今回の問題がエスカレートしてトランプが辞任に追いやられても、逆にリスクが低減することになり、「ペンス副大統領」が減税やインフラ投資などトランプ政策の大枠を受け継ぐことになれば、逆に毒気の部分がなくなってスムーズに政権が運営しやすくなるといった楽観論も飛び出しています。
大統領が辞任すれば通常相場は「リスクオフ」になるものですが、逆にこのケースではトランプ辞任を好感して相場が再上昇するというシナリオをもっている人間も多くなり始めているわけです。
ざっと書き出してもこれだけメディアの放つトランプギルティ説とは異なる見方が市場で渦巻き始めていることがわかります。
個人的にはどの説もそうですかと妄信できるものではありませんが、市場が大方の見方と違う方向に走り出す可能性は否定できず、激しく暴落すると思って戻り売りをしていたら突き上げられてあっさり損切りというまさかの事態も起こりうるということだけは考えなくてはならなさそうです。
ただ先週までの動きで下落はすべて終わりかどうかはまだ確証がもてていないだけに、ここから「ショートカバー」だけを期待して買い向かうのは現時点では危険であるといえそうです。
しかし、トランプの評価をめぐってここまで多様な見方があることは正直びっくりで、この件をネタにFXで金を稼ぐのは一段と難しさを増していることを実感させられます。
こうした考え方の良し悪しを議論するつもりはありませんが、このロシアゲートに関しても固定観念で一方向の動きを男性せず、フレキシブルに対応できるように柔軟な発想をもって臨むことが必要のようです。政治ネタでFX取引をするのは実に難しいものがあります。
(この記事を書いた人:今市太郎)