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このコラムでは株や債券、為替、商品価格などの相場の相関性がかなり崩れてきており、本来反応すべき相場がまったく反応しなくなっていることは随所でご紹介してきていますが、「ＯＰＥＣ総会」後急落した原油価格もそのひとつで、昨年まで原油価格が株価や為替相場に常に微妙な影響を及ぼしてきたのとは大きく異なる相場状況が示現しはじめています。
もちろん50ドル割れと26ドルにまで下落するのとでは訳が違うのは当然ですが、それにしても株も為替もまったく原油価格に反応しないというのはかなり不気味な状況といわざるを得ない状況です。
減産は合意したが実態はサウジがひとりで減産しているだけ
Data チャート広場
たしかに「OPEC総会」で減産が合意になって以来昨年からかなり原油価格は安定したといえますが、協調減産の実態はサウジアラビア一国が積極的に減産をして他の加盟国の減産分を補っているのが実情で、今回のOPEC総会でも来年3月まで9ヶ月の減産合意をしたものの、加盟各国が本来決められた減産レベルを守る状況にはなっていないのが大きな問題といえます。
また50ドルを超えてきますと米国の「シェールガス」も息を吹き返し、採算ラインを超えてくることになるため、「OPEC」サイドの減産が加盟各国に必ずしもプラスにはならないところも気になる状況です。
サウジアラビアはサウジアラムコの上昇を成功させるため、多少の無理は承知で減産を一手に引き受けている状況ですが、果たしてこのやり方がプラスに働くことになるのかどうかは今後の相場次第ということがいえそうです。
なぜ株も為替も無風なのか？
不思議なのは米国NYダウも為替もほとんど原油価格の下落に反応しない点です。
部分的な最適感で言えば、米国のシェールガスは2019年末まで1バレル50ドルで売ることができるヘッジができているからだという話も伝わってきますが、そもそも原油価格が下落すると先進国はまたぞろデフレに陥りやすい状況になりますからいいことは無いはずで、昨年の状況とあまりにも違いすぎる相場の反応にはかなりクビをかしげるものがあるのは事実です。
為替相場の場合には同じことがおきても相場がテーマとして大きくクローズアップしませんと殆ど反応しないという不思議な市場であることは間違いありませんが、やはりここでも個別市場の相関性が極めて希薄になっていることを強く感じさせられます。
リスクに対する準備ができていない相場ほど危ないものはない
Data Bloomberg
過剰にリスクに危機感をもつのもいかがなものかと思いますが、足もとでの「VIX指数」はまたしても10を割り込む楽観的な状況になりつつあります。
とくのこの「VIX指数」が大きく低下するなかで株価がじり高傾向を示現しているのはなんとも気味の悪い状況で、ひとたび相場がおかしくなりだすと市場参加者全体がいきなり売りを強めてきたりすることで想像以上に大きく相場が崩れる危険性が常につきまとうことになりそうで、非常に注意が必要になってきます。
我々は残念ながら相場の下落というものをなかなか感知できないものですが、大地震が起きる前になまずが暴れるとか鳥が騒いだとかいう話がでるようになんらかの事前感知情報があることは間違いないわけで、こうした妙な楽観相場の継続というのはもしかするとそうしたリスクを我々に警告しているのかもしれない点には注意を払う必要がありそうです。
今のところ米国の債券市場だけが何かの変化を感じ取っているようで、まったく債券金利は上昇していませんが、この先さらに相場の異変が感じられるようであれば、具体的な取引方法を考えるなどの対策が必要になるのかも知れません。
どうも金融相場は不思議な状況からなんらかのシグナルと発しているように思えてなりません。
（この記事を書いた人：今市太郎）
