「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観とともに成熟し幸福のうちに消えて行く」というウォール街の有名がな格言がありますが、いよいよ6月相場はこの格言がぴったりと当てはまる時期にさしかかってきているようで株と債券の相場の動きがとても気になる時間帯にさしかかってきているようです。
日本株はすっかり蚊帳の外ですが、米国のダウは多少の下落はあるものの、依然強さを維持しており、VIX指数も下落して妙な楽観相場を継続中ですが、債券市場は全くそれとは異なる慎重姿勢を貫いており、なんとも気味の悪い雰囲気が漂いはじめています。
ドル円だけではまったく稼げない足元の相場
Data Bloomberg
市場に膠着感がでて日柄調整をしてしまうというのはドル円にはよくある光景ですが、今年は様々なビッグイベントを控えているこの時期にも係わらず膠着状態が強まり始めています。
この大きな理由はなんと言っても「米国10年債の金利がまったく上がらない」ことで、金利が上がらないというのは市場が債券を買い求めている証拠ということになります。
ブルームバーグのチャートを見てもおわかりいただけるように5月に入っても米10年債金利は下落の一方ですでに2.2%ぎりぎりのところまで下落してきています。
通常「FRB」の利上げが起きた直後に材料出尽くしで下がることはありますが、利上げ前にここまで停滞するのは結構難しいことで、どんな指標がでてもこの利率が下げる限りはドル円が大きく上昇に転じることはなさそうな状況になりつつあります。
債券市場はどうも米国のここからの経済についてもかなり慎重な見とおしのようで、株式市場の相楽観とはかなりコントラストの強いものであることが理解できます。
ドル円は経済指標の悪化を嫌気して売り込まれストップつける始末
昨晩発表された米国4月のコアPCEデフレーターは市場予測を下回り、また5月の消費者信頼感指数が市場予測より低く、4月分まで改定下方修正されたことからほとんどいいところなしでドル円は下落を加速し、ストップをつけたために110.670円にまで落ち込む状況となりました。
一旦下落してからは111円台には戻ることができず、本日はすっかり110円台を中心とした動きになりそうで、小動きが長時間続いているだけにエネルギーが蓄積されており、新たに大きな動きが示現する可能性が高まりつつあります。
それが週末の雇用統計になるのかどうかはよくわかりませんが、FXで確実に稼がなくてはならないトレーダーならば一旦ドル円はお休みしてほかの通貨ペアの動きに集中したほうが効率がよさそうな状況です。
ユーロもポンドも不安定なので取引は相当注意が必要
ただ、ユーロもポンドも相場はかなり不安定です。すでにこのコラムでもお伝えしているようにギリシャの債務問題がでてきていますし、6月の「ECB理事会」において緩和に対する見直しの検討が開始されるかも知れない報道も飛び出してユーロは上げ下げ両面の材料をかかえる状態となっています。
さらにポンドは選挙前の世論調査で保守党が労働党に迫られている上、メイ首相が破れかぶれのEU離脱を口にするなど、よろしくない材料満載で一旦止まったかに見えた下落がまた加速中です。
うまくとれればドル円よりはるかにおいしい思いができそうですが、ほとんど政治ネタが絡むものなので、相場についていけるかどうかが最大のポイントになりそうです。
為替相場はいつやってもやさしいという場面はあまりありませんが、とくにこの足元の相場は目先に材料が明確になっているにも係わらずかなり難しい局面に入ってきていますので、方向感がわからなくなったときには無理せずに様子見をするなどしてリスクをとり過ぎない姿勢が大切になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)