早いもので「BREXIT」をめぐる投票で大さわぎになってからちょうど1年が経過しようとしています。
投票直後の世論調査予測から残留濃厚などという大誤報が流れたものの、開票が進むにつれて実は「BREXIT」確実という反対情報が流れポンドもドル円もユーロドルもみなそろって暴落・暴騰となってしまったのは記憶に新しいところです。
「BREXIT」決定直後は英国終了のような話がまことしやかに流れましたが、結果的に1年経過してどうなったかをいまさらよくよく見て見ますとアナリストが事前に口走っていたような状況にはなっていないことが改めて確認できるものとなっています。
結局下げ止まりの状況
「BREXIT」決定当初は奈落の底まで下げていくと思われたポンドですが、対ドルではなべ底のような形である程度戻してきており、一方的に下落するかのように言われていた状況とはかなり異なる展開を続けています。
国内の投資家にとってはなじみのあるポンド円のチャートを見ても同様で昨年10月に底をつけてからは、それなりに戻ってきていることが確認できます。
もちろん昨年6月24日残留決定などという誤報がでたときに、ほぼ160円だった相場から考えれば一時的にかなり下落したことは事実ですが、150円に近いところまで戻してきた動きを見ますと、一方向だけには動かないということを改めて強く感じさせられる次第で、為替アナリストのパニック時の見通しをいうものが実はほとんど信用ならないことを実感させられます。
物価は確実に上昇で株価は堅調
「BREXIT」決定後の政治状況でいいますと歴代でもかなりの無能力者だったキャメロンがさっさと辞任してからは、メイ首相が誕生しましたが、ひとりでどんどん先に進んでしまうこの首相と国民との感情の間に隙間ができてしまったことだけは確かなようで、ここへきてメイ降ろしが始まっているようで、政治状況は結局1年たってもギクシャクしたままが継続中です。
「BREXIT」の影響で顕著なのは英国の物価が非常に上昇していることで、米国を除けばもっとも先進国で利上げが早く実施されそうな国という印象が強まっています。
ただ、ポンドが大幅下落したことで堅調さを保った株式市場は今も健在で、「ロンドンシティ」がどうなるのかはいまだ不透明ながら「BREXIT」で完全終了というところまで酷いことにはなっていないのがちょうど1年経っての結果ということになります。
超悲観論というのは面白いが結局当たらない
この1年の為替を再度見てみますと、とにかく10月までは戻ったら徹底的に売りで対応すれば確実に利益を確保できた時間帯であったことがわかりますが、トランプ政権の誕生以来ポンドの動きは単に下落するだけではなくなってきており、そう簡単な相場ではなくなってきていることが理解できます。
「BREXIT」のような事態に対する相場予測というのは誰も経験したことがないだけに、どんなに英国と経済に詳しいエコノミストやアナリストが分析してみても所詮憶測の域を出ないことを強く感じます。
最初のパニック状態のときには一定の方向感が形成されるものですが、それが未来永劫に続くと考えるのはやはり危険で、為替相場はつねに世界的な状況の中で相対的に変化するものなのだということを認識しておく必要がありそうです。
ここからのポンドの状況もしかりで、EUとの交渉状況によっては弱含む可能性も高まりますが、それがすべてであると理解するのはかなり危険そうで、それなりに戻りを試す局面も十分に想定しておく必要がありそうです。
結局兆悲観論というのは相場をにぎわす絶好のねたにはなりますが、実需も絡む為替相場は必ずしもそれだけでは動かないということを肝に銘じておく必要がありそうです。
ただ、優秀な政治家というものは簡単に登場しないことはどうやら事実のようで1年経過しても混沌とした状況にはまったく変化がない、結構厳しい状態は依然継続中です。
(この記事を書いた人:今市太郎)