金融機関の相場予測ほどあてにならないものはないのは、毎年年初に発表になる予測を見ていてもよくわかるもので、こうした報道が役に立つのかどうかはいまひとつ判断できないところもありますが、今年もとうとう前半が終了し、後半に突入するのにあたって多くの金融機関が年末のドル円予想を開示しはじめています。
各金融機関のドル円予測は軒並み低下
上の表は各金融機関が公表しはじめている年末のドル円とユーロドルの想定レート、ならびに集計している「ブルームバーグ」の平均値が載っているものですが、「ブルームバーグ」の各行平均値は何の意味もないとしても、ここに登場している3行は軒並み下落を予想しています。
もちろん年末にいたるまでにどのような動きをするかが大事な話で、いったん上抜けしてから下落するのか、このままじりじり下落するのか、さらに大きく下げてこのレベルの戻るかによって年末の想定レートの意味はかなり異なるものとなってくることになります。
さすがに月次でどうなると想定開示しているところはありませんので、あくまで弱気強気を判断するための情報ということになりますが。今年最高値が1月に瞬間につけた118.597円がいまのところ最高値となっていますから、昨年並みにほぼ20円の値幅を確保するとなれば、120円を一瞬越えるか下方向に沈み込んで99円台ぐらいまで突っ込む可能性があるとも理解できます。
ただ、各行が予測しているのはドル安であり、上値を伸ばすと思っているところはほとんどないのが実情ですから下方向に値幅を広げるリスクを心配するほうが間違いなさそうです。
ドル安理由はトランプと日銀の政策
このドル安と見る金融機関の材料も結構ばらつきが見られます。まず「FRB」の利上げについてはここから本当に利上げも資産縮小も手をつけられるのか懐疑的な見方をするところが多い一方、来年退任の「イエレン」の後任はトランプ色が強くなり一定の緩和を継続するのではないかという見方も広がっているようです。
またトランプの政策が遅々として進まない状況下では伝家の宝刀としてまたしてもドル安に仕向けた本格的口先介入が飛び出すと見る向きもあり、政治的にドル安が演出されると見ている向きも存在することが注目されます。
こうした金融機関はこの夏に噂される暴落予想をどう思っているかについてはさすがにまったく何も回答していませんが、7のつく年の夏の下落や、大統領交代後の7月以降の大幅株価調整アノマリー、さらに例年やってくる米国8月相場の低迷などがブレンドされれば暴落するかどうかはわからないにしても一定の調整がドル円を下押しする可能性はあり、ここから100円れベルまで下押しするのはそれほど難しい話ではなさそうにも見えてきます。
さらに興味深いのは日銀が年間役80兆円の国際保有残高増加を公言してからその後の買い入れペースがかなり鈍っており足元では年間50兆円程度とこっそり「テーパリング」が始まっているのもドル円の上昇を抑えているとの指摘もではじめています。
債券市場は依然米国の先行きに懐疑的
ひとつどうも納得がいかないのは米国債の金利の動向で、追加利上げでも「バランスシート」縮小でもまったく上昇せず、30年債利回りなどは逆に下落するといった驚くべき状況になっていることです。
毎回ご紹介している米国債のイールドカーブは明らかに長期債のカーブが寝始めてきており、なんとなく嫌な雰囲気がではじめてきていますが、まだ決定的な形にはなっておらず、一旦上昇して株価に悪影響を与えるシナリオというのは成立しないのかどうかは非常に気になります。
ただ、債券市場は米国の経済は「
FOMC」メンバーが楽観視するほど先行きのいいものにはならないと見ていることは間違いないようです。
金融機関によってはこのフラット化は前よりもおきやすい状況になっているので、それが起因して株価が暴落するかどうかはわからないとするコメントを出し始めているところもありますが、少なくとも2008年まではこのカーブがフラット化すると株式市場にはろくなことが起きていないのもまた事実であり、単に年末のドル円レートがどのレベルになるかだけではなく、そこに至るまで道筋をもっと詳しくしりたいと思う状況です。
さて、実際の相場はどうなることやらですか、とにかく夏の相場でなにか動きがでてくることになると思いますので、その流れをしっかりと確認して相場についていくようにしたいものです。