トランプ政権は「FRB」の銀行監督を担当する副議長としてランダル・クォールズ氏の氏名を計画しているようですが、この人物はジョージ・W・ブッシュ政権で財務次官を務めた経験をもち、かなり金融業界との親和性が高いことから「ドッドフランク法」の大幅修正を含めて「FRB」を制御する人物になる可能性がでてきています。
タルーロの実質的後任を皮切りにFRB大改革か
クォールズ氏は現在、ユタ州ソルトレイクシティで自身が設立した投資会社を経営しているが、以前はプライベートエクイティのカーライル・グループのパートナーを勤めている。「IMF」の米国エグゼクティブ・ディレクターの経験もあり金融業界には精通した存在で、4月に退任したタルーロが実質的に担ってきた銀行監督を引きつぐ形となりそうです。
しかしこれは「ドッドフランク法」の大幅修正着地のための人材投入であることは間違いなく、これまでトランプ政権と「
FRB」の政策に食い違いが生じてきたものをここからのメンバー一新で大きく変化させていく目的があるものと思われます。
来年1月には「
イエレン議長」の任期が切れることになりますしフィッシャー副議長のそれに続く退任も確定的で実質的な主要メンバーが大きく入れ替わることはどうやら間違いのない状況になりつつあります。
ただメンバー交代前に暴落が起きる可能性も
来年以降は「FRB」も大きく変化することが容易に予想されますが、「イエレン議長」が在任期間中にさらなる利上げと「バランスシート」縮小をスタートさせてしまった場合、株式相場がこらえきれずにクラッシュしてしまう可能性も残されており、「FRB」の方針変更が市場にプラスに働くかどうかはなかなか微妙です。
とくにここのところの歴代「
FRB」議長で相場の暴落という厳しい洗礼を一切受けずにきているのは「
イエレン議長」のみの状況ですから、残された半年弱に果たして何も起こらずに退任できるのかについても市場の関心は高くなってきているようです。
トランプの意向を反映させた「
FRB」の政策ということになるなら、当然現状の低金利による「中央銀行」バブルを温存するためにこれ以上金利は上げたくないでしょうし、「
バランスシート」の縮小も積極的には行わせたくないはずで、次の議長に誰が指名されるかも非常に大きな市場の関心事となりそうです。
仮に新「
FRB」の執行部が現状の政策を逆に維持するような方向に動けばドル円の上昇もかなり抑えれることになりますし、株式市場も大きなクラッシュなしにさらにじり高相場を継続させられる可能性がでてくるだけに非常に注目される事象となります。
足もとでは米国の長期債金利がいよいよ上昇を始めており、3%を突破する可能性すら否定できない状況です。また自動車の「
サブプライムローン」もかなり膨らんでおり、金利上昇で破綻が早まればこの秋までに大きな調整が先に出てしまうリスクはかなり高まってきています。
トランプの「
FRB」改造計画が果たして市場の厳しい状況に追いつくのかどうかが大きなポイントになることは間違いなさそうです。
すでに足もとの相場は夏枯れの様相を見せ始めており、大きな動きも出なくなっていることからあまりぱっとした展開にはなっていませんが、債券金利の上昇が加速するとともに長短金利のスプレッドが並行して縮小することになれば、大きな株価調整が示現するのは免れない状況です。
これまでもこのイールドカーブのフラット化は大きな株価調整を引き起こしていますので、実際の市場はポストイエレンの話よりも足もとの状況のほうに神経を尖らしているともいえ、「
FRB」が来年1月までどのように動いて行くかは非常に相場に重要な影響を与えることになりそうです。
今年の夏は気温以上に金融市場が暑い相場になりそうな気配濃厚で、とにかくその動きから目が離せない状況が続きそうです。