今回は市場期待の梯子をはずさなかったわけですから、8月のジャクソンホールでより具体的な出口戦略を「ドラギ総裁」が口にする可能性が一段と高まった状況といえそうです。
ただ、「ECB」の出口戦略がはじまり「テーパリング」が現実になりはじめると「FRB」の金融引き締めともあいまって、市場にもたらされてきた過剰ともいる資金の流動性が一気に巻き戻されることになることから、大津波のあとの引き波のような状況が発生する可能性はきわめて高くなります。
ユーロ圏からの年間1兆円あまりのマネー流入が消える
ユーロ圏からの資金流入は「ECB」の月800億ドル、年1兆ドルの資産買入れからやって来ているのが現状です。これが「米国FRB」の金融引き締めがはじまっても比較的市場を落ち着かせている大きな要因になっているともいえますが、9月以降米国が「バランスシート」の縮小をスタートさせ、「ECB」も秋以降に「テーパリング」に動き始めた場合には、これまでの過剰流動性は一気に巻き戻しを余儀なくされ、債券市場は結構な混乱に突入することになりそうな気配です。
やはり問題は債券市場からはじまり株式市場へと波及することが予想されます。欧州の債券市場は米国の債券市場以上に敏感に反応しますから、ひょっとすると米国の債券金利の上昇のきっかけをつくることになるのかも知れません。
この夏為替市場のテーマ通貨はやはりユーロか
対ドルで1.16を明確に乗り越えてきたユーロはもはや1.18レベルまでこれといった抵抗ラインが存在しない状況で、さらにこれをも超えるとなれば久々に1.2を試す方向も見えてくることになります。
となると一体ドル円はどこまで下値を試すことになるのか恐ろしくなりますが、すでに相場はこの方向で動きだしているように見えます。
どうにもしけた状況のドル円にかまけている暇があるのならユーロドルで取引したほうが利益にありつける可能性は高そうなこの夏相場です。動かないものの方向を模索してもたいした意味がないのが相場というものです。
今年の夏はユーロにかけてみるというのもひとつのやり方になりつつあります。ただし下値を確かめながら徐々に上昇していくことが想定されますので、やはり押し目をまってから買いを入れていくという発想がワークしそうです。
7月一杯は堅調そうな米国株式相場には要注意
総楽観状況が依然として継続中の米国株式市場ですが、なにもなくても8月というのは夏枯れでそれなりの調整がでる月となります。
したがってここからは相場は上昇よりも下落に向かう可能性はきわめて強く、債券金利次第ではありますが、ドル円も下落につきあリスクはかなり高くなりそうです。
通常の下落に輪をかけたような大幅下落が示現するかどうかはまだなんともいえない状況ではありますが、米国の長短金利差は確実に縮小しつつあり、嫌な雰囲気が高まってきていることだけは間違いありません。
相場のピークを見極めることほど難しいものはありませんが、為替でユーロ以外に儲け口があるとすればやはり下落相場ではないでしょうか。
8月中になにかが起きるといったどこかの占い師のような予言は一切できませんが、これで景気拡大から98ヶ月になる米国は過去の成長平均58ヶ月を大幅に超えているだけになんらかの調整が入ってもまったくおかしくないところに差し掛かってきています。
これだけ平和でなにもなに時間が続いていること自体きわめて不思議ですが、変化は急激に現れることが十分に予想されます。熱中症とともに急な相場の下落に相当な注意を払いたい8月相場になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)