FX個人投資家を誘惑する自動売買の罠シストレなどという言葉がFXの世界に登場してから、かれこれ6年以上の時間が経過しようとしていますが、結果的には国内のFX個人投資家は内容の理解しやすいリピート系に移行してしまい、今やシストレ自身はかなり下火になってしまったということができます。
しかしこの領域で全般に目につく言葉として無視できないのがFX自動売買です。
AIやディープラーニング、GPUなどが話題になってきている中にあってFXの業界が個人のFX投資家に提供する自動売買というのは本当にワークしているのでしょうか?今回は夏の閑散期でもありますので、少しこうしたFXを取り巻く業界状況についてまとめてみたいと思います。
FXの自動売買イコール自動で利益がでるという錯覚
国内のFX個人投資家が自動売買という言葉に不思議な魅力を感じるのは、自動売買がとりもなおさず「自動利益獲得装置」というイメージを増幅するからです。
たしかにシストレにしてもリピート系にしても設定だけ完了させれば、自動売買はしてくれるのですが、それは決して自動で利益を出してくれるわけではない点に大きな錯覚があるといえます。
状況次第では止め処もなく自動で損失が積み上がる装置になっているということを理解しておく必要があります。確かに自動売買は嘘ではありませんが、「FXで自動的に利益がでる」と思うのは残念ながら大間違いな状況です。
前週利益が今週継続するとは限らないシストレ24フルオート
国内では事実上シストレで唯一サービスを続けているのが、インヴァスト証券の「シストレ24」です。
昨年からストラテジーの選択をお任せできる「フルオート」が登場したものの、どうも看板と内容が異なりすぎるとかなりユーザーから叩かれたようで、最近では人気レストランの名称にあやかったのか、「俺のフルオート」という名称に変更して自動でストラテジーを変更してくれるサービスをはじめています。
毎週土曜日に、その週まで利益の出ているストラテジーに自動的に入れ替えをしてくれるというのがフルオートの中身となります。
しかし、たとえば8月第一週のドル円を思い起こしてみると、何度となく110円割れを起こして相場的には下方向が強くなりそうに見えたものの、雇用統計の結果で上伸することになり、週明けはさらに上方向を試すかもしてない不明確な状態です。
前週調子がよかったストラテジーに入れ替えても、本当に機能するかどうかはわからないのが実情ですから、この手のやり方でフルオートというのはかなりお寒い状況であることは間違いありません。
リピートイフダン系はシストレよりマシだが方向を違えれば大変
リピートイフダン系のサービスにもアルゴリズムを導入してレンジの値幅を自動計算してくれたり、相場の移動にあわせて売買を調整してくれたりするサービスが登場しています。
初期の設定で上昇すると思って利用を始めて、その通りに上昇して値幅が上方向に移行するような場合はまったく問題なく利益が積み上がるわけです。
しかし、結果がその逆ですと延々と自動的に下落局面で買いポジションを定期的に積み上げて含み損だけが脹らむのが現実ですから、放置しておけば100万や200万程度の証拠金はあっという間になくなるという厳しい状況に追い込まれてしまうのです。
もちろんある程度の値幅で損切りは可能ですが、当初の見立てを間違えればとめどもなく損失が出続けるわけで、とんだ自動売買なのです。
こうしたサービスは目利き感のあるFXトレーダーが自分の相場の見立てにあわせて裁量ではなく機械を利用して儲けるのならば非常に実利的なものになります。しかし、もともと間違った見立てに利用すればなんら儲けにめぐり合うことはないものなのです。
つまり、FXにおける自動売買は儲からないとは言いませんが、儲けられる視点をもったFXトレーダーが使わないとその機能を発揮することはできないというのが結論です。
とくに方向を見誤るとドテンしてくれる機能もありませんから、自分で早めに損切りをして自動売買をやめるという判断も実は必要になります。
FXの自動売買というのは非常にFXの個人投資家には心地よい響きのサービスですが、誰が使っても無理なく儲かるという意味ではないことだけは事前に十分にご承知いただきたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)