お盆休み前を控えてほとんど動かないかと思われた市場ですが、北朝鮮がまたしてもグアムを標的にしてICBMを発射するといった話が報道で伝わったことで、国内の株もFXのドル円も下押しを画策する連中のちょうどいい材料が提供されることとなってしまい、ドル円は9日の朝からまたしても下値を試す動きになっています。
しかし何かあると「リスクオフ」から円高になるFXの世界もよくよく考えて見ますと日本とグアムの位置関係を見れば日本のほうがはるかに危ないところに位置しており、本質的なリスクから考えるとどうも納得のいかない動きになっているのが実情です。今回はそのあたりについて考察してみたいと思います。
アルゴリズムの初動リスク回避は馬鹿のひとつ覚え状態
「アルゴリズム」がニュースのヘッドラインのテキストを読んで即座に反応するという話はいまやかなり知れわたった内容といえますが、残念ながら今の「アルゴリズム」取引は最新のディープラーニング機能のAIを実装しているわけではありませんから、その初動はきわめて単純なものにならざるをえないことだけは判ってきているのです。
つまり「地政学リスク」からはドル円は一旦まず円高へとシフトすることがわかります。
出典:yahooブログ
上記は数年前にYahooブログに掲載された地図で、かなり便利なので掲載させていただきましたが、グアムまで到達するICBMということになれば最低4000キロは飛行することができ、すでにアラスカのアンカレッジまでは届くことがよくわかります。
ただ、アメリカ本土にまで到達するためには1万キロは飛行できる必要があることがわかります。
この地図は2013年に掲載されていたものですから、すでに4年前から同じようなことで騒ぎになっており、そういう意味では進歩があるのかないのかはよくわかりませんが、位置関係からしますと明らかに日本の上空を飛び越えていくことは間違いなく、グアムに行くまえに日本に着弾することは十分に考えられるかなり嫌な状況ということができます。
4000キロ到達するICBMですと発射から着弾までは30分弱かかるようですから、発射直後の報道でドル円は円高になったとしても、その後の市場の判断によって、いきなり円安に転ぶこともやはり考えれる状況であることが予想されます。
ほかの通貨の動きも気になるところ
あまり現実の問題と考えたくはありませんが、北朝鮮と米国が戦闘と開始し、日本が最初の被害当事国にならないかぎりリスク回避の円高は結構続く可能性がありそうです。
また韓国の状況がかなり厳しくなれば、韓国ウォンが売られて円高というのもありますし、周辺国の通貨の状況が相当円に影響を及ぼすことが予想されます。
米国が戦争当事国ともなればドルからユーロに資金が逃げる途上でユーロ円も大幅に上昇し、ドル円はそちらに引きずられることで円安ということも考えられます。
市場の中でこの流れが明確になるのにはそれなりの時間がかかる可能性もあり、戦闘の状況が変化することで流れが相対的な通貨の変化でFX市場の状況が大きく変わることもある程度覚悟しておく必要がありそうです。
つまり日本に影響がなければ円高だが、戦争に巻き込まれれば円安といったほど簡単な動きにはならないリスクがあることだけは認識する必要がありそうです。
どのぐらいの規模と期間の戦争になるのかも大きなポイント
こうした戦争状態がどのぐらいの規模で、さらにどのぐらいの期間行なわれることになるのかも重要なポイントです。
とくに周辺国の中国やロシアがどのようにかかわるかは、為替にとってはかなり大きな影響を与える問題になりそうで、すんなり解決がつく短期間の戦闘行為なのか本格的な朝鮮戦争なのかによってもFX市場が受ける影響は相当異なるものになりそうです。
こうしてみますとミサイルが飛んでくるという初動での円高以外は、実際にどのような状況が起きるか次第で円の動きはかなり変わりそうです。
まあ戦争のさなかにFXで儲ける必要があるかどうかは問題ですが、わかりやすいのは円を相手にするよりもユーロを対象にした方が、ぶれがなさそうだということだけはいえそうです。
いずれにしても初動で利益を稼ぐことができてもしっかり利益確定してその後の動きが果たしてどうなるのかをしっかり見極めたうえで次なる行動を考える必要があるのではないでしょうか?FXにとってはこの話はかなり難しい判断を迫られるものになりそうで、これも断定は禁物といえそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)