金曜日の東京タイム、ドル円は一気に108円を割り込み、その後のロンドンタイムでも下値を試す動きが続き、予想よりも早く下落を示現させてしまいました。
これはドル安に起因するもので、その原因のすべてが北朝鮮問題とはいえませんが、メキシコ沖の地震で円高が進んだというのもいまひとつ正確な理由ともいえない状況です。
どこまで下がるのかを必死に予想してみてもあまり意味はありませんが、ひとつだけ明確なのはドル円に売りのトレンドが出たことで、ここから下値をさらにためしにいく動きとなると、今年の最高値は年初の108.600円レベルになる可能性がかなり高くなりそうです。
米債は短期も長期も下落してフラット化しはじめている
Data FT
毎回ご紹介しています米債のイールドカーブですが、直近では短期金利も下落をはじめており、長期金利が同時に下落することで低金利のフラット化が実現しようとしています。
通常フラット化は短期金利が長期金利に追いつく形で実現することが多いわけですが、足元の状況はそうではない点は非常に注目されるところとなっています。
それではなぜ金利が上がらなくなっているのでしょうか?ひとことで言えば債券市場は米国の先行きの経済状況がよくない方向に向かうと予測していることが、こうした動きを示現させる大きな材料になっているといえます。
インフレも思ったほど進まず経済指標も必ずしもいいものではないとなると、先行きに対する楽観論が消えることになるわけですが、債券市場はそれを先取りする動きになっていることがわかります。
ただ、それではほとんど下げもなくじり高が続く株式市場との整合性がとれないことになります。つまり、どちらかの見立てが大きく間違っている可能性があることは認識しておく必要があります。
ハリケーンの金融市場への影響も想像以上
日本国内では北朝鮮の問題と民進党議員の不倫問題一色ですが、米国の金融市場はハリケーンの影響がかなり深刻で、さらにあらたに到来するハリケーンによる被害総額は日本円にして30兆円を超えるのではないかとの試算も飛び出すほどで、北朝鮮よりも断然この問題のほうが深刻な状況です。
実際に株価もそれが原因で下げる局面があり、債券金利の下落にも影響を与えています。
FX市場にネガティブな影響を与えるものというのはひとつだけではなく複合的なものですから、要因を断定するのは意味がありませんが、今後のドル円の動きを考えた場合にはこの債券金利の動向をさらに粒さにチェックすることが重要になってきそうです。
年末にむけてドル円再上昇はほとんどありえない?
巷ではドル円再上昇説をとなえる市場のアナリストや為替関係者の発言が結構目立ちますが、FXにおけるドル円の動きは日米の金利差だけでは説明のつかないものになりつつあり、政策金利差ではなく、あくまでもリアルな債券金利が大きく影響していることを改めて痛感させられます。
今年トランプ政権は法人税減税はなんとか実現しそうな気配ですが、それ以外の大幅な財政出動も幅広い減税策も実現の見通しはたっておらず、実質的に来年までなんの政策も打ち出せない状況になりつつあります。
となると米国の景気は債券市場の見通しのとおり悪化することは十分に想定され、やはりどこかで株価が崩れだす時期に直面することになるのではないでしょうか。
今回の足元のドル円の下落は一時的との見方も多いわけですが、意外に深い下押しになることも考えておく必要がありそうです。実際チャートを見ていますと下値のサポートがかなりはっきりしなくなってきており、状況次第ではあっという間に105円に到達するリスクも高まりつつあります。
全体的に相場の雰囲気が変わりつつある点には十分に注意しなくてはなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)