FX・とりわけドル円相場については米国の10年債利回りが極めて大きな影響を与える存在となっているのはご存知のとおりです。しかしこの債券金利は9月11日以降急激な上昇をはじめています。
今回はこの米国10年債金利に焦点を当て、なぜ今上昇しているのかについてみていくことにします。
ハリケーンの被害が想定より小さく買い戻しの可能性
Data Investing.com
9月の初旬といえば米国ではハリケーンの被害に加え、北朝鮮問題でリスクがてんこ盛りとなった時期で安全資産の10年債に資金が逃げ込み始めたことは間違いないようです。
しかし11日から急激に反転して上昇することになった理由はもうひとつよくわからないところがあります。ハリケーンの被害が想定以上に小さかったことから買い戻されたというのは確かにありそうですが、北朝鮮リスクはすっかり解消したわけではなく、ドル円が上昇したのにまるで債券金利がついていったようにも見えてなりません。
もうひとつは資産縮小が現実のものとなってきたことから「FRB」がイールドカーブを立てるために利上げよりも先行して資産売却を始めるという観測に相場が忖度しはじめて10年債の金利が咲きに上昇しはじめたという憶測も成り立ちます。
ただ、上昇したといっても2.2%台ですから驚くべき上申というほどでもなく、調整の域を出ないという見方もあり、やはり「FOMC」以降にどうなるかが注目されることになりそうです。
金利上昇を株式相場は嫌気するものだが・・・
米国の株式市場はNYダウを中心として毎日のようにじり高ではあるものの続伸が続いており、ある意味では異常とも思える相場状況が継続中です。
「バブルは末期に走る」というものの、簡単には下落しそうもなく、トレンドすら出る始末で、債券金利の上昇をほとんど気にしていない点はかなり気になるところです。
すでに5日連続で最高値更新の米国株式市場はあきらかに”やりすぎ”であり、半端内バブル感が漂っていますが、これも簡単には終わらなそうな状況で、相場にどこまでついていくかも大きな問題です。
通常「中央銀行」が政策金利でコントロールできるのは短期金利だけですから、10年債以上の長期金利はあくまで市場原理に基づいて動くもので、この9月の「FOMC」における中銀の政策でどこまで上昇ができるのかも大きな関心事になりそうです。
債券相場は米国の景気がこの先もそれほどよくはならないと判断していることは間違いなく、株式相場のかなり楽観的な先行きへの見立てとは大きく乖離していますから、今後どちらの判断が正しかったのかが金利と株式相場の動きで明確になってくることが予想されます。
投機筋はここ10年で最大の10年債保有量
この米国10年債ですが投機筋の保有量はここ10年でも最大のボリュームになってきており、このまま金利が大きく上昇し投げが入るような事態になれば、金利はさらに上昇するリスクも抱えています。
3%を超えるような事態になれば、債券市場もそれから影響を受ける株式市場にもかなりの異変が起きそうですが、足もとの超楽観相場が果たしてそうした動きになるのかどうかが大きなポイントとなりそうです。12月利上げが「FOMC」で明確にならなければまたドル円は売られる可能性も十分にあり、拙速な判断は禁物な状況といえます。
とにかく先週からドル円のセンチメントが大きく変わったことと、米10年債利回りが上昇しはじめたことだけは厳然たる事実であり、後付の講釈はいろいろと飛び出しますが、実際に相場に何が起きているのかはもう少し見守る必要がありそうです。
相場の急激な変化というものは誰かが仕掛けている可能性は十分にありますし、FX市場はとくにそうした投機筋の仕掛けが出やすくなりますが、足元の相場の動きが明確なトレンドになるのかレンジ相場の中の一時的な動きなのかを見極めるには今週後半までもう少し時間がかかりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)