現状におけるコンセンサスとしては、資産縮小の開始は完全折込済みで、時期の問題だけが残っているのと12月追加利上げもすでに61%以上が織り込んでいる状況ですから、これを超えるサプライズが「FOMC」後に発表されないかぎりそれほどドル円が上昇するとは思えない状況にあります。
Data CME Fedwatch 9/20 現在
フィッシャー副議長の置き土産がどうでるか?
Photo Reuters
今回の「FOMC」ではいくつかの見所が存在します。まずは任期を全うせずに早期に辞任をするフィッシャー副議長が「FRB」にどのような置き土産をしていくことになるかです。
同氏は早期辞職理由を個人的な理由としており、明確にしていませんが、高齢とは言え特段健康上の問題があるわけではないようですから、やはりトランプの政策に我慢がならなかったというのがその大きな理由であろうと思われます。
今年8月英国のフィナンシャルタイムズの取材に応じたフィッシャーは、トランプが「ドッドフランク法」の撤廃などの金融規制の改悪を行おうとしていることに強い憤りをあらわにしています。
また、8月15日バージニア州で発生した白人至上主義団体と反対派の衝突について、トランプが「双方に責任がある」と述べたことで多くの政権内のユダヤ系人物が気分を害したことは間違いなく、次期FRB議長と目されたコーンNEC委員長さえ政権を離れることを考えたわけですから、イスラエル中銀の総裁まで経験したことがあるバリバリのユダヤ系であるフィッシャーが激怒して「FRB」を去る決意をしてしまったというのもまんざら間違いではなさそうな状況です。
影の議長としても大きな力をもってきたフィッシャーが「イエレン議長」に遺言として景気とは関係なく粛々と利上げと資産縮小に励むように置き土産を残す可能性は高く、これが反映された内容が垣間見られるかどうかがひとつの注目ポイントになっています。
いまやコーンNEC議長のFRB議長の目がなくなっただけに、「イエレン議長」続投がもっとも可能性が高いとまでいわれ始めている中で、そもそも民主党支持者で民主党背政権から議長に指名されたイエレンがトランプ政権で引き続き議長を続けるのかどうかが大きな問題です。
前述のフィッシャーからの遺言も含めて、もはや退任を決めているのであれば、粛々と金融正常化に突き進み、あまり経済指標にはとらわれない政策を残りの期間にイエレンが推し進める可能性はかなり高くなります。
こうした意向が記者会見などに色濃くでることになれば、ドル円は上昇することが予想されることから大きな注目ポイントとなっているのです。
景気の状況を見てといったいつもながらの発言ならドル円下落
ただ、「イエレン議長」はもともとまじめな性格で、思い切った発言をしないことで定評のある人物ですから、ハリケーンにも見舞われて、インフレ率も低下しつつある現況で、12月利上げを強く示唆しないいつもながらの発言を繰り返す可能性もありますし、「FOMC」メンバーのドットチャートの利上げタイミングが予想以上に後ずれするリスクも残されています。
こうなるとドル円は大きく下落し、株価は上昇というシナリオが実現する可能性も十分に考えられます。明日の未明ドル円がどのレベルで「FOMC」を迎えるかにもよりますが、こうした「ハト派」状況が示現すれば109円台レベルまで下押しするリスクも考えておく必要がありそうです。
12月まではまだ2ヶ月ありますから、投票権のあるメンバーから慎重な意見がでればこうした流れも十分に考えられます。そうでなくても「Sell the Fact」になりやすいのがFXの世界ですから、明日の早朝は非常に注目されるイベントとなることは間違いない状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)