毎回国内のFX業者のレバレッジの問題が指摘されると結構がっかりした結果となるのですが、現行25倍まで許されているFXのレバレッジが金融庁の行政指導により「10倍程度にまで下げられる見通し」となったようです。
金融庁はFXの業界団体、金融先物取引業協会と規制見直しに向け協議を始めており、早ければ来年にも内閣府令を改正して実施する可能性がでてきています。
どうやら最大変動率から計算したレバレッジダウンの模様
日経新聞の報道によりますと、1985年以降のドル円相場で最大の変動率は6.7%ということで15倍以上のレバレッジをかけていると元本がなくなるところから、「最大レバレッジの規制」が考えられているようです。
まあ確かにまったくストップを置かないで、いくらで証拠金がなくなればこうした事態に陥るのかと考えるとレバレッジを下げることも重要になりますが、そもそもFXは不測の事態でFX業者が利用しているカバー先から金額がでなくなるような状況では大きくスプレッドが広がり、10倍のレバレッジなら絶対安心というわけにはいかないのが問題で、リスクは必ずしもレバレッジの問題ではないという点にも着目しなくてはなりません。
これだけレバレッジにうるさく規制をかけてくるのは先進国の中でも日本ぐらいのもので、果たしてこれが本来の消費者保護につながるのかどうかはかなり首を傾げたくなる状況といえます。
総合課税だが海外の業者を利用する個人投資家が増える可能性も
10倍のレバレッジになりますと、1万通貨ペアの取引に必要になる証拠金は従来の25倍のレバレッジ時の4万円から10万円へと跳ね上がることになり、同じ証拠金で取引できるボリュームは激減することになります。
こうなると国内のFX業者を利用する”うまみ”というものはまったくなくなることも予想され、業界団体がすんなりと受け入れるのかどうかがひとつの注目ポイントになってきそうです。
しかし個人的な印象でいいますと、かなり取引妙味が欠ける状況となるのは間違いなく、とくに海外FXで200倍以上のレバレッジで取引できる業者と比較した場合、国内業者なら定率の課税が優遇されるところが大きな魅力となってきました。
しかし、そもそもたいして稼げないとなると、こうした税制上の優遇も魅力にはならない可能性が高まることになり、ますます海外FX業者を利用するユーザーが増えるのではないかと危惧したくなる状況です。
海外口座と国内口座のハイブリッド利用でしのぐ世界か
こうなると国内の個人投資家も、相当うまくFX業者を利用することが重要な世の中になってきそうです。
たとえばボラティリティの大きな不安定な相場状況ではとにかく国内業者だけをつかって粛々と少ない枚数で取引を行うこととし、大きく稼げる場面では海外業者を利用して少ない資金で大きな利益を稼ぐといったある意味で「ハイブリッドな取引」を行うことも必要になりそうです。
また証拠金額の違いに着目して、国内での取引とは逆のヘッジ取引を少ない資金の海外FXで行ってある種の両建てのような効果を持たせるといったことも必要になってくるのかも知れません。
いずれにしても10倍のレバレッジでは、10万円の資金から億単位の資金を稼ぎ出す長者が生まれる環境ではなくなりつつありますから、専業の投資家というのは相当な資金をもって売買しませんとまとまった利益を上げることはできなくなります。
国内のFX業者としては、初心者が常に参入しては証拠金を消耗させて去っていくという繰り返しがもっとも利益につながってきたのかも知れませんが、ここからはもっと個人投資家を儲けさせる方法を考えないと取引ボリュームは増えないことになりそうで、顧客対応がどう変化するかにも注目したいところです。
いずれにしてもFX投資家にとっては、決してうれしい話ではない状況が粛々と進んでいるようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)
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