米国のメディアによりますと、ティラーソン国務長官が4日に辞任するのではないかとの報道が強まり、本人が否定してことでなんとか収まるといういつもながらの政権内のごたつきが明るみにでる事態となっています。
今年7月国防総省で開かれた安全保障チームと、閣僚らとの会合でティラーソン氏はトランプを公然と批判し、関係者の話では、ティラーソンはトランプを「能なし」と呼んで批判したとされています。
ティラーソンは4日に行われた会見でとにかく辞めるつもりがないことを明確にしていますが、能無しといったかどうかには触れていません。
まあどこまで本当でどこからが嘘なのかはまったくわかりませんが、日ごろ問題発言も多く、政治家というよりはビジネスマンの視点で勝手なことを口にするトランプに何人もの重要閣僚が頭にきている可能性は否定できず、どうも政権内でもギクシャクした動きが続いていることを示唆する報道として注目されます。
ティラーソンも典型的なビジネスパーソン
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ティラーソンは1975年にテキサス大学オースティン校の土木工学科を卒業後1975年に石油メジャーの旧エクソンに入社し、2006年にエクソンモービルの最高経営責任者(CEO)に就任しているやり手で、2012年にロシア石油最大手の国営ロスネフチのセチン社長(元副首相)と、北極海と黒海の共同開発で合意したことからロシア大統領のウラジミール・プーチンからも評価される存在として有名です。
なぜこの人物がいきなり政界入りすることになったのかはいまひとつよくわかりませんが、石油関連でロシアとの取引経験もあるというバックグラウンドを見ますと、その近辺のことが評価されてトランプに抜擢された可能性はかなり高そうです。
政権内ではもっとも世界中を飛び回る存在
足元の北朝鮮の問題でも中国に出向いて交渉を行ったり、ロシアとコンタクトをとったりとかなり忙しく動いているトランプの右腕的存在がティラーソンのはずですが、その重要閣僚が辞任するというニュースがヘッドラインを踊るわけですから、まったくのデマとも思えないわけで、それなりにトランプとの関係がよくない状況にあることは感じることができる状況です。
正直なところ今ティラーソンが政権から去ることになれば、かなり大きなダメージになるのは間違いなさそうで、一旦は本人の完全否定で落ち着いたかに見える状況ですが、今後さらに同じ話が再燃しないかどうかが気になるところです。
せっかく根回しに奔走してもツイートでぶち壊すトランプ
ティラーソンは様々なルートを使って北朝鮮ともコンタクトを続けているようですが、こうした努力とは裏腹に訪中の真っ最中にトランプがティラーソン国務長官に対して「チビのロケットマンと交渉をしようとして時間を無駄にしていると伝えた」とツイッターに投稿するなど、結構感情を逆なでするようなつぶやきも行っており、これが完全に予定調和で行われているものならばいいのですが、どうもトランプが勝手に行っている可能性は高く、日常的にこの二人は親和性を欠く存在になってしまっているのかもしれない状況です。
北朝鮮もこうした状況はよく見ているはずですから、政権内のごたつきが表面化すればそれにつけこむ形でミサイル攻撃などのパフォーマンスが激化することも考えられ、来週以降の北朝鮮の記念日に関る軍事行動にはやはり十分な注意が必要になりそうです。
ドル円相場はこうした状況を知ってか知らずか、4日の東京タイムに112円台後半から崩れ始める動きを示現しており、何度かトライした113円台攻めで定着することができなかったことからさらに下落調整が進むリスクもではじめてきています。
市場はあまり気にかけなくなっている北朝鮮問題ですが、ティラーソンの問題を含めてまだまだ予断を許さない状況が続きそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)