6日発表された米国9月の雇用統計はハリケーンの影響でNFP自体はかなり悪い数字となりましたが、全米失業率が前月から0.2ポイント改善し、16年ぶり水準を更新している上に、先行きは災害復旧が雇用者数を押し上げる可能性もあり、平均時給も上昇したことからドル円は113.400円レベルまで上昇し、113円台を維持して週末を迎えそうな雰囲気が漂いました。
しかしその後にメディアを駆け抜けた「北朝鮮情報」のおかげで今月もまた完全に行って来いの逆戻り相場になってしまいました。
米国本土に到達できるミサイル
雇用統計が発表されてからほぼ2時間後にロシアのモロゾフ下院議員が「北朝鮮は新たな長距離ミサイルの実験を準備しており、米西海岸を攻撃することが可能だとの数学的な計算すら示した」と発言したため、ドル円は一転して売られ、滝のように下落をはじめて一時112.61近辺まで下げることとなってしまいました。
雇用統計後の動きとしてもとに戻るというのは最近よくあることですが、ここまで行って来いが明確になるのも久々で、ロングを相当切らされたFXトレーダーも多かったのではないかと思います。
また雇用統計結果を受けてドル円やユーロ円思い切り買い上げた短期の投機筋は完全に投げさせられる動きになっており、今回は想像以上に痛手を受けた投機筋が多くなったものと推測されます。
まあ雇用統計がいかに「投機主体で動いている」相場なのかをまざまざと見せつける結果になってしまったといえます。
北のミサイルが米国本土到達するとトランプが攻撃する可能性も
トランプは引き続き北の挑発にかなり脅かしかえす発言を繰り返していますが、米国民の6割近くが武力での北朝鮮征伐を支持しているといわれるだけに、ひとたびなにかあれば、本当に北朝鮮に攻撃してしまうリスクも高まりそうです。
ここで気をつけなくてはならないのは、ひとたび米国が参戦した場合、戦闘地域が米国よりもかなり遠いわけですから、過去の事例を見てもドルが大きく買われることがあり、ドル円もこれまで「アルゴリズム」が馬鹿の一つ覚えのようにミサイル発射でドル円を売る動きをしてきましたが、ここからは流れが変わることにも注意が必要になりそうです。
米系の金融機関のレポートでは米国と北朝鮮が軍事衝突した場合には足元の相場から5円ないし8円程度ドル円が上昇するものの、その後日本に被害がでると大幅に反落するといった見方も登場しています。北朝鮮ミサイルなら円高という固定観念は結構危なくなってきているといえるのです。
しかし10月18日は中国共産党大会が開催されますし、11月にはトランプの訪日、訪中が予定されはじめていますから、この時期に本当に北朝鮮が何かやらかすことがありえるのかどうかは相当疑問です。
とくに米国が北朝鮮に直接的に対話をするルートを持っているのは明らかですから、相当自制するように促しているものと思われますし、このままとうとう戦争になるという事態も正直なところ考えにくい状況です。
もちろんありえないことをやってのけるのが北朝鮮ですから絶対にないとは言い切れませんが、米国の株式市場はほとんど北朝鮮リスクを意識していないようにも見え、8月のあたりに比べるとセンチメントも変わってきているように思われます。
北の問題がなければドル円も確実に上昇か?
今週はもう少しドル円にも調整がでるかと思いましたが、結局200日移動平均線を割るような動きにはなっておらず、予想以上に底堅い動きが継続中です。
本来昨日の北朝鮮報道がなければそのまま113円超で週末を迎え、週明けからはもう少し上を目指す可能性もありましたが、気を取り直してまた上伸を目指すのかどうかが気になるところです。
米国の株もドル円もほとんど調整が入らないのは個人的にはかなり気持ちが悪い印象をもっていますが、相場がそうした動きをする以上、とにかく勝手に反発してみても意味はありません。とにかく相場の動きをよくチェックして予断を持たない売買を心がけたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)