株価のほうは相変わらず日米ともに最高値更新相場を継続中ですが、114円台にさしかかったドル円はオプションの影響を受けて一気に上昇するといった勢いでもなく、売買する側にとってはもうひとつ妙味のないものになってしまっています。
しかしNYタイムの終盤、減税に関して共和党内からその内容に反対する造反組が登場しているというニュースが流れた途端にドル円は見る見る売られ、113円台中盤にまで下落するといったかなり神経質な動きを演じることになりました。
またその後に報道された共和党がテイラー博士のFRB議長就任が望ましいと考えているという報道では一転してドルが大きく買い上げられる動きとなり、初動はアルゴリズムによる動きではあるものの、市場がこの二つの材料にかなり関心を高めていることが改めてわかる状況となってきています。
FRB議長人事では新たな候補もいるとの情報
トランプ大統領がハワイ経由で日本や韓国、中国に歴訪する11月3日より前にFRB議長の人選を発表するのではないかというのが大方の市場の見方になっていますが、パウエル理事、テイラー博士に加えてほかの人選もありうるといった発言がホワイトハウス周辺からも漏れ伝わっており、どうなるのかは蓋を開いてみないとよくわからないのが実情になってきています。
ただ、昨晩のようなマーケットの反応については大統領周辺も十分に理解していることと思われますので、タカ派の議長が就任することになればドル円は大きく上昇、しかも株式市場にかなりの水を差すことになりますから、これをきっかけに市場最高値更新相場が終了する可能性もあり、そう簡単にはタカ派を選択できないのではないかという憶測も飛び交いはじめています。
ここから年末までのドル円に対する影響ということでいえばECB理事会のテーパリングのあり方も問題ですが、FRB議長の人事決定がかなり大きな影響力を持っていることがわかり、やはりこれがはっきりするまでは長いポジションはもてない状況にあります。
減税案についても共和党内でひともめありそうな状況
一方今年の予算案が上院で可決されたことから異常とも思えるほど楽観的な見通しで減税案も前に進むという見方が米国の金融市場では広がっており、これが毎日じり高の株式相場を押し上げる原動力になっていることは間違いありません。
しかし現実には共和党内にはかなりの不協和音が広がっているようで、これが外に吹き出る形となると減税実施の見通しがいきなり立たなくなることも考えられ、内容次第では12月を待たずに減税の実施可能性が断たれるリスクも高まりつつあります。
こうなると株価を皮切りにかなり激しく相場が売られる展開になることは容易に予想がつく状況で、ドル円もこれに巻き込まれる危険性はかなり高まります。
かなりの不確実性により構成される相場状況
このように市場はいいところ取りをして悪い部分には目を瞑って相場を買い上げるというバブルならではの動きをしているわけですが、不都合な問題が現実のものになるとその段階で騒ぎが大きくなる可能性はかなり高くなり、妙な動きからいきなりボラティリティが高まってしまうという展開には相当な注意が必要になりそうです。
この変動する二つの要因の組み合わせ次第ではドル円は年末に向けて大きく上昇することも考えられますが、途中で頓挫する可能性もありますし、最初から下落方向に反転するきっかけにもなりかねません。
多くの市場アナリストが年末までの相場の方向性を語りだしていますが、実際にはこの二つのエレメントがどうなるのかが見えてこないことには方向感は語れません。
とにかく盲目的にだれかの相場予想についていくことだけは、この段階ではくれぐれも行わないようにしていただきたいと思います。
(この記事を書いた人:今市太郎)