本来為替というのは金利差で稼ぐ投資法であることは間違いありません。
しかし、いまや先進国のほとんどは低金利になっていますから、差分で稼ぐといってもよほど多額の資金にレバレッジでも書けないかぎり”雀の涙”程度の運用利回りしか得られず、そこに為替自体の価格変動が伴うと、なにをしているのかわからないぐらいの結末しか迎えない、大きなリスクが伴うことになってしまいます。
今その代表例となろうとしているのが「トルコリラ円」で、とくに我々がしっかり認識していない「地政学リスク」が異常に高まっていることもその購入にかなりのリスクを提供する形になってしまっています。
ここ1年のトルコリラ円価格推移
ここ1年のトルコリラ円の状況を見てみますと、昨年12月に高値だった33.930円をつけてから結構上下に動いていますがとうとう年間を通して33円には戻ることができず、直近ではまた価格が下落しはじめている状況です。
直近の価格を最高値と比較してみた場合、16%も下落しているわけですから、レバレッジがかかっていれば損失はさらに大きくなる勘定で、8%の「政策金利」で毎日スワップがつけば結構な金額なるわけですが、それをすっかり帳消しする価格的リスクが常に付きまとっていることになります。
くりっく365上場当初はとてもいい国のはずだったが
トルコは資源国ではありませんが、欧州との地続きであり、EUにも加盟することが期待さえているなかなかの工業国ということで、今後前途有望という話でくりっく365にトルコリラ円が上場したのは記憶に新しいところです。
しかし、実態は「エルドアン」というなかなかの独裁的な大統領が存在しており、最近では米国をはじめ、欧州各国ともかなり激しいやりあいをする存在となっています。
またエルドアン自身はイランのマネーロンダリングに関与したなどと名前が挙げられているほど、かなり不思議な存在で、地政学的にもシリアとイランに隣接しているわけで、サウジアラビアの様子もおかしくなっている今、このあたりは北朝鮮の地政学リスクよりも数段危ない状況に陥っていることはあらかじめ考えておかなくてはなりません。
欧州系のメディアは日々トルコ情勢を伝えていますからこうしたメディアをダイレクトに購読できる環境と語学力があればトルコに何が起きているのかは粒さに理解できますが、日本の新聞だけ読んでいたのではほとんどよくわからないのが現状です。
足元ではNATO軍の演習で、エルドアンの名前が敵に一覧に記載されていたことに激怒しトルコ軍を演習から撤退させるなど、EUとの関係もさらにぎくしゃくしはじめており、リスクを挙げだしたらきりがない状況です。
広範な地政学リスクが発生すると猛烈な円高に
Data Google map
あらためてトルコの周辺地図を見てみますと、隣国にシリア、イラク、イランをかかえ確かに欧州の玄関口ではありますが、難民が押し寄せれば国を通過してくることになりますし、北方向にはウクライナとロシアが控えており、相当微妙な位置関係の国であることがあらためて理解できます。
さらにそこに国内でエルドアンによる圧政が継続しているわけですから、金利は高いといっても本当にこれで買うかという判断は相当迷うものがあります。
たとえば1トルコリラを28.5円というかなり安値で10万通貨購入して、通常どおり25倍などのレバレッジで運用した場合、11万4000円ほどの資金でエントリーできるわけです。
1万通貨当たり100円のスワップがもらえるとなれば、10万通貨で1000円ですから価格変動がなければいい投資であることは間違いありませんが、3円も円高方向に下落した場合は原資がいきなりなくなる勘定でとてもではありませんがハイレバレッジで売買をするような代物ではいことがすぐに理解できます。
しかも市場参加者のほぼすべてが「スワップ狙い」ですから、円高で暴落すると流動性はまったく失われ売るに売れなくなる事態も想定されます。果たしてここまでのリスクをとってやるかが投資家の大きな判断の分かれ目になりそうです。
※現在トルコリラ円の1万通貨あたりのスワップが最も高い業者は「ヒロセ通商」の93円です。
(この記事を書いた人:今市太郎)