ここのところ、FX相場に典型的なチャートの形が登場すると、ほとんどの市場参加者が同じ方向にポジションをもってしまい、チャートの教え通りに相場が動かないというかなり難しい状況が続いています。
酒田五法はもう使えない?
酒田五法については多くのトレーダーの方がその内容の一部ぐらいはすでによくご存じのことと思います。
これは江戸時代の米相場で活躍した相場師の本間宗久が見出したもので、相場全体の流れで起こるパターンとして株式市場でも為替市場でも非常によく相場の判断に使われるものとなっています。
三山や三川、三兵、三法、三空といったチャートの基本パターンは海外でも同様の見方をされるものがあり、とにかく参考になるものとして利用されてきたものです。
しかし、どうもこうした基本チャートがあまりにも市場参加者に知れ渡ってしまったのか、典型的なその形がでても必ずしも相場が教えの通りに動かなくなってきているのです。
確かに江戸時代なら東京から大阪まで早馬を走らせても4日はかかったそうですから、情報のリアルタイム伝達性と誰かが口走った情報をネットやSNSを通じて、みなが知ってしまうというこの世の中では相場がその通りに動かなくなってしまっている可能性は高いものといえます。
それとともにディープラーニングを実装したAIが相場に暗躍するようになってから、こうした動きが潰されるようなトレードも結構ではじめているのではないかと思われるふしが非常に強くなってきています。
ユーロドルでもユーロ円でも相場は反転
ここ数週間で非常に印象的だったのは「ユーロドル」です。
10月末のECB理事会でテーパリングが決定したものの、市場期待から大きく後退したことでいきなり下げ始めたユーロドルは完全に「三尊天井」を下抜けてネックラインを割り込んだことから、個人投資家も投機筋も挙って売り浴びせでさらなる下落を狙う展開になりました。
しかし、結局1.155をつけたところでそれ以上下がらなくなり、ショートが積み上がり過ぎて結局1.185レベルまで噴いたあと、今度はドイツの連立政権の問題からまた下落途上にあるというかなりわかりにくい展開を継続中です。
一方ユーロ円は三山を形成する形になっており、こちらもダブルトップから多くの市場参加者が下方向への下落を狙ってショートを振ったものの、結局下落しきらずに大きなショートスクイーズとなり、ユーロドル同様足元ではそれが少し下落に転じた状況です。
こちらも市場にとってはとんだ期待外れで、ちょっと形の悪い三山の形状になったことでここから一体どうなるのかが非常に気になるところです。
AIが相場をひっくり返している可能性も
こうしたチャートのパターン認識はディープラーニングが進んだAIがもっとも得意とするところで、ひと昔前ならば可能性のないチャートはどんどん排除することでチャート形状の絞り込みを行っていたわけです。しかし、最近ではNvidiaのGPUに代表されるように、形状認識が驚くほど速くできるようになったことから、一定の形が形成されたあとでも、さらにそのあとがどうなるかを見抜いたAIが逆に買い上げてショートカバーを増幅するといった動きに出ている可能性も否定できなくなっています。
つまり我々個人投資家は酒田五法の基本的な形がでたのに大喜びして、セオリーどおりの売買ポジションを作りますが、AIは実はさらに先を読み込んで相場をひっくり返しにかかっている可能性があるわけです。
我々はこうしたところまで気にすることはこれまでほとんどありませんでしたが、典型的な形がでても結局悉く相場がひっくり返される状況を見ていますと、AIが相当読み込んでいる可能性を疑いたくなるわけです。
こうなるとどうすれば相場に勝てるのかが大きな問題になりますが、ここからは典型的なチャートパターンがでてもセオリー通りにならないことを一応疑ってかかる必要が相当にありそうだということは認識する必要があります。
またみなが同じ方向を向いたときというのは、かなり利益機会が少なくなることも覚悟しておくべきでしょう。なかなかやりにくい相場になってきていますが、もはや個人投資家の裁量取引はここまでの神経戦になりつつあるということがはっきりしてきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)