ユーロは本当によくわからない通貨になりつつあります。相場だけの問題では結構激しい「ショートカバー」がでる動きになっていますが、それを悉く政治の問題が粉砕して下げを加速するという、イタチごっこで何が起きているのか正確にわからないとちょっと手を出しにくい状況になりはじめています。
おそらく過去のチャートを必死に探しまくるAI実装の「アルゴリズム」もこうした人為的、かつ朝令暮改のような相場にはうまく対応できないのだろうと思います。
その相場の混乱を招いている張本人がドイツのメルケル首相です。これまでほとんど問題なしとされたドイツの連立政権構想がここへきていきなりスタックしはじめており、先行きがわからなくなりつつあります。
まさかの総選挙やり直し?
ドイツに関しては連立政権にむけてとにかく話が難航していますが、ここで詳細分析をしてもほとんど意味がありませんので、アウトラインだけかいつまみますと、メルケルが圧倒的支持率をもっておらず、結果的にはトランプよりも支持率の低い状態であることから特定政党が圧倒的な議席数を確保することができず、主義主張の違う政党がむりやり連立を組もうとしていることに大きな問題があります。
この調子では日々状況が変わることになりますから、よほどドイツの主要メディアなどから情報を得られていないかぎりユーロのポジションをもっていても、どうにもならないところに来ているというのが現実です。
そもそも連立といっても二党ではなく三党でこねくり回しているわけですから、利害調整が簡単にできるはずはなく、こうなると少数政権を発足させるか再選挙をするしか手立てがなくなりそうな状況です。
ドイツはここへきてメルケルへの支持もしっかり集まっており、盤石であるかのような報道がでていましたが、実態はお寒いかぎりで、この火種はまだまだ継続しそうな雰囲気です。
Data German federal returming officer (BBC)
上記の政党議席数を見ていただくとわかりますが、色とりどりは結構ですが、とにかくばらばらに分散しており、この中から極右政党だけ外して連立をしようというのですから、そもそも選挙の結果がうまく活かせていないのがよくわかります。
これまでイタリアがこうした状況を長く続けてきていますが、先進国のドイツもこうした状況で、政治の世界はどの主要国も結構混乱していることが改めて認識できる次第です。
ユーロ主体で下落ならユーロ円にドル円が連動下落も
ユーロドルとユーロ円は足元でも結構ロングがたまっており、投機筋なのか誰なのか判りませんがほどき売りが出るたびに大きく下げる相場が続いています。
今回のこのドイツの選挙ネタはとにかくユーロ起因ですからユーロドルもユーロ円も一緒に下げる話になりますが、ドルが積極的に買われるというよりもユーロが売られるわけですから、ユーロ円の下落に連動してドル円が下押しするリスクもでてきそうです。
ご存知のようにドル円自身も相当ロングがたまっていますから、下押しが進むことになれば、ドル円にさらに投げがでることも予想され、話は結構面倒な方向に向かっているといえます。
今のところ再選挙が決まっているわけではありませんが、年末にむけてそうした動きがでますと、ドル円に一定の下落トレンドが出る危険性があり注意が必要です。
昨年に比べますとかなり相場の動きがわかりにくくなっていますが、米国NYダウだけは粛々と史上最高値を更新しており、リスクに対する感応度も株と為替ではずいぶんと異なっていることを感じさせられます。
米国が感謝祭でお休みに入るだけに、欧州起因でこの問題が大きくなり相場がぶれることには十分警戒したい年末相場です。
(この記事を書いた人:今市太郎)