感謝祭に突入したFX市場はさすがに突っ込み売りもでず、111円台初頭まで売られるとそれなりの小さな「ショートカバー」もでて111円台にすっかり定着しながら上下をうろちょろする時間が経過しています。
しかし個人投資家の方はつい先日まで、114円手前まで戻していたドル円が111円台にいきなり沈み込むとは思ってもみなかったはずで、かなり意外性をもって受け止められていることと思います。しかしこれにはいくつもの理由が積みあがりつつあります。
債券市場は米国経済の先行きに非常に懐疑的
ドル円が上昇しない最大の原因は、10年債をはじめとする米国の長期国債の金利が資産縮小が始まっても、追加利上げが12月に行われることがほぼ織り込まれても、まったく上昇しないことがなによりの原因として挙げられています。
ひとことで言えば米国の債券市場も未曾有のバブルが進んでおり、債券価格は上昇しても利率は上昇しない状態が続いていることが挙げられます。
Data Bloomberg
ここ1年あまりの米10年債の利回りを見直してみますと、足元はもっとも底というわけではなく9月8日に2%割れ寸前まで下落したところで一旦底値はつけている状況です。
このときにドル円は107円台を記録しているわけですが、それから比べると決して高い金利が維持されているわけではないものの、ここまでレートが下がらなくてはならないのかという状況にあることは間違いありません。
ただ、大方の市場参加者が思い描いていた年末は、金利上昇からドル高という見通しはかなり砕け散っていることは間違いなく、積み上がり過ぎたドル円のロングがここからどこまで投げられるか次第では、さらなるドル円の下落もありうることを覚悟すべきではないでしょうか。
年末はドル高という思い込みを捨てること
ドイツの連立政権ネタで売られたユーロドルもいつの間にやらまた1.185台を回復するというなかなか驚くべき相場展開ですが、こういう状況ではぼんやりと先行きをイメージしておくことは必要ではあるものの、思い込みで売買をしてしまうと結構やられが大きくなりやすくなりますので、通常よりもさらに柔軟に対応できる体制をとっておくことが重要になります。
現状の金利レベルが推移するかぎり、ドル円が107円を下回る可能性はきわめて少ないとは思いますが、感謝祭明けにすんなりもとのレベルに戻ると想定しておくのはかなり危険なようです。
一時的に110円台に入り込めば、オーバーシュート気味にさらに下値を試すこともありうると理解しておくべきでしょう。
本邦生保勢が下値で買いを入れているから下がらないという話は常に登場していますが、それでもあっさり111.500円を割れているわけですから、さらに下方向を目論む連中も確実に存在します。
あくまでチャートで底が確認できないかぎり、レベル感だけで買い下がるのはかなり危険な時間帯です。
何もしていないのに今年もかなり思い通りのトランプ
冷静に考えてみますと、今年もトランプはTPPからの離脱以外正式にできたことは何ひとつとしてなかったにも関わらず株価は史上最高値更新、失業率は低下で、ドルについてもそれほど各国に脅しをかけなくてもドル安を示現しているわけで、このままこのわけのわからないゴルディロックス相場がそのまま続いてしまいそうな状況が継続しそうなところにさしかかってきています。
一部の経済学者などは今の米国の株式相場の好況が続くことの説明がつかずお手上げ状態だといいはじめていますから、完全に市場の想定を超えた相場が走っていることだけは間違いないようです。
そこに暴落を知らない世代とAIがとにかく押し目を買いまくっているのですから、相場が走るのも当たり前で、資本市場間の相関性は完全に崩れたといっても過言ではありません。
つまりこれまでの常識から相場を判断すると大きくやられるリスクに直面しているというわけです。これは今年ここから残された1か月あまりの相場でもかなり意識して取り組むべきではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)