さすがに感謝祭で休暇が続いていることから相場は殆ど動きませんでしたが、ユーロドルのみ、またドイツの連立期待から1.19を回復するという結構驚くべき戻りが示現されています。
欧州だけの相場が展開するとこういう動きになるのだということを改めて認識させられていますが、このおかげもあって「ドルインデックス」は下落の一途であり、はからずもドル安は進行中です。
米株式相場にとっては最適の環境
足元のドル安、債券金利の上昇しない状況は米国の株式市場にとっては非常に居心地のいいいものになっているようで、仮に30日にも予定されている税制改革法案がうまく上院を通過しないような事態が起きてもあまり大きく調整はしないのではないかとの見方が広がりつつあります。
つまり値幅で調整せずに日柄で調整してまた年末に向けて上値を試す可能性があるということです。
しかし、ここからどれだけ米国の株式市場が上昇したとしてもベースにあるのはドル安であり、金利の低下であるだけに為替市場のドルがこの動きについていくことはないと認識せざるを得ないわけで、年末にむけての為替の売買は想像以上に難しくなりつつあります。
市場関係者が気味悪がる長短金利スプレッドの縮小
毎回このコラムでもお伝えしているように米国債の長短スプレッドはますます狭くなってきており、とうとう58bpという狭い差になってきています。
まだ完全にフラットや逆イールドというところまでは来ていませんが、2000年の「ITバブル」の崩壊や2008年の「リーマンショック」の崩壊前夜を知る者は悉くこの状況に気味悪さを訴える状況で、唯一フラットな金利のレベルが過去の2回よりもかなり低いところにあるため、株式相場には影響を与えないという楽観的な見方も広がっています。
これまで多くの市場参加者が、この長短スプレッドを株式相場の暴落警報サインとして使ってきているだけに、これがワークしなくなるとなれば、もはや相場の先行きを正確に示すものがなくなるわけですから、正直なところお手上げに近い相場展開が続くことになります。
米系銀行は挙って2018年ドル安相場を予想
株式市場で心地よさを味わっている米系金融機関は、挙って来年のドル安を予想しはじめています。
多分に「ポジショントーク」も含まれているものとは思いますが、「ゴールドマンサックス」は来年利上げ4回でもドル安継続の見通しを発表していますし、モルガンスタンレーもここから単年ではなく、6年という長期のスパンでドル安の基調が続くとの予想を出しています。
相場はかなり安全になったと思っており、自分の目の黒いうちには金融危機は起こらないことを願っているし実際そうなると思っているといったかなり呑気な発言を繰り出してきています。
この人物2008年の「リーマンショック」の前にも相場は問題ないとして金融引き締めを口にしていた、とんだ読み間違えの実績を持つだけに本当かよ?という疑いの念がでてもおかしくはないわけですが、足元の総楽観相場はとうとうさらにそのステージを前に進めようとしているように見えます。
為替相場もこの動きについていこうとするのならば、まだやりようがあるわけですが、逆にドル安という話になってしまいますと、結構ここからの取引は難しいものになりそうで、すでに200日移動平均線を下抜けてしまったドル円は終値でもそれを回復することなく週の取引を終了しているだけに、さらに下値も意識した年末相場を迎えることになりそうです。
FX市場は常に相対的な関係のなかで構築されますから、市場参加者の思惑と違う方向に動くことは十分にあり得るわけですが、それにしても直近の動きはこれまでの予測とかなり異なり始めていることが気になります。
(この記事を書いた人:今市太郎)