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米国市場は連日、上院の減税改革法案可決に対する楽観的な見通しが続いておりNYダウは続伸していますが、ハイテク株から金融株へと物色対象が移動しつつあり、状況には微妙な変化が訪れています。
この減税案は確かにすべて実施されれば「GDP」を0.6％ほど押し上げる効果があると言われていますから、当初のトランプ案の3分の1以下のレベルとはいえ、可決が決まればそれなりの動きが出そうな雰囲気になってきています。
もっとも影響が大きいのは株価か
この減税案、実施してから時間が経ちませんと効果は明確に表れないことになりますが、とりあえず法案成立ということになれば株価がさらに上昇しそうな雰囲気になってきています。
足元ではすっかりいいところどりの市場ですから、銀行株が好感して買われている状況ですが、実はこれは先に進むと必ずしも株高の原因にはならないことになってきそうです。
まず「GDP」の押し上げからインフレ圧力が今よりも明確に改善されることになると、「FRB」は年4回以上に利上げを余儀なくされることになりますから、債券金利は上昇しドルもそれにつられて上昇することが予想されます。
たしかに企業減税が進めば内部留保率も高くなることから、株主への配当による還元率が高くなることになります。
株価の上昇に寄与することは間違いなさそうですが、その一方で金利が一定以上の上昇を示現すれば企業の利益率は確実に低下することになり、さらに金利の上昇が株式市場全体を圧迫してくることになりますので、すべて一方向にプラスに働くわけではないことも十分に認識しておく必要がありそうです。
為替で注目されるレパトリ減税
為替市場ではより注目されるのがいわゆる「レパトリ減税」で、足元でも2兆6000ドルあまりあるといわれる米国系企業の海外資産の資金還流が減税で実施されるとかなりのドル高が予想されています。
この減税は2005年にブッシュ政権時に単年だけの時限立法として成立したことがあり、なんと年間でドル円は20円近くドル高になった経緯があることから、今回も同様のドル転レパトリ効果を期待する向きが非常に市場に多くなっています。
しかしその一方で2兆6000億ドルあるとされる、米系企業の海外保有資金は既にそのうちの2兆ドルがドル転された状態で保有されており、残りは6000億ドルあまりということになり、しかもそのほとんどがユーロからドルへの転換が主体になりそうであるため、新規に積み上げられる利益以外は対ユーロでドルが多少動いても、ドル円で20円近く上がるといった期待をするのはあかなり無理がある状況になってきています。
また、今年のドル転分レパトリ資金は多くの企業がこの法案の成立を見守っていることから年内にドル転される金額はかなり少なくなりそうで、足元では法案が成立してもドル高がすぐに訪れる可能性は低くなりつつあります。
このまま上院通過ならバブルが一層進む？
既に上院でも議論されている問題ですが、足元の相場環境でこの減税案を通過させてしまいますと、米国はさらにバブルが走ってしまうリスクにさらされることとなり、本当にそのまま上院を通過するのかどうかが大きな注目点となってきています。
メディア上には心地よい話しがやたらと出てきますが、小さな政府を目指す共和党の理念の中で、こうした法案がどこまで容認されるかが大きなポイントになっていることは間違いなく、必ずしも一枚岩ではない共和党の上院が下院とは異なる判断を示した場合、まだ株価に結構な失望売りがでることだけはリスクが残っていることをしっかり認識しておく必要があります。
為替相場のほうはこの行方次第でかなり上下に振れそうですから、憶測だけでポジションを立てずにあくまで事実をもとにして売買をすすめていきたいところです。
（この記事を書いた人：今市太郎）
