そろそろ2018年相場に対する主要金融機関の見通しなどのレポートがそろい始める頃ですが、今年はゴールドマンサックスが出してきたレポートに非常に注目が集まりつつあります。
株式と債券 、クレジット市場の強気相場の長期化に伴い、平均的バリュエーション(評価)を示す指標が1900年以来で最も高い水準となっており、ある時点で投資家にとって痛みに変わる条件が整いつつあると指摘をしているからで、これが相場の早期な瓦解を示すものなのかどうかが非常に気になるところです。
1900年といえば日本では日清戦争が始まる前ぐらいの話で明治が起動にのるかどうかぐらいの話ですから、ほとんどレアケースが現在進行中だということがよくわかります。
ゴールドマンのレポートでは、とにかく金融市場においては、株式と債券 、クレジットが同じように同時に高くなる状況はめったになく、活況の1920年代と黄金の50年代のケースだけだったと分析しており、楽しいことには必ず終わりがやって来る。弱気相場がやがて訪れるだろうと締めくくっている点が非常に嫌な雰囲気を醸し出しています。
市場は依然楽観的
この原稿を書いている時点では米国の上院はまだ減税法案を可決していませんが、仮にこの法案が可決となればレパトリも恒常的に低税率で実施となることから、金利がこのまま上昇さえしなければバブル相場は延命し、さらに継続することになるとみているヘッジファンド勢はかなり多いようです。
シーズナルサイクルから言っても来年の春までは今のような相場が続く可能性は否定できない状況で、個人的には本当かとは思いますが、ITバブル末期のナスダックの5000ドルまでの上昇を思えばまったくありえない話ではなくなっているといえます。
市場を破壊するのは高インフレの示現
ゴールドマンもこのレポートで指摘していますが、この超楽観相場をぶち壊すことになるのはやはりインフレの到来ということになりそうです。
なにがインフレをもたらすかについては正確な部分が予測はできていませんが、完全雇用で減税などをはじめてみればバブルがさらに走るのは間違いなく、いくら先行き警戒感があって金利があがらないといっても政策金利のみならず実効金利が上昇し始めることで相場を完全にぶち壊す瞬間が訪れることになりそうです。
ファンド勢は最大この先2年程度まで今の相場が継続する可能性を考えているようですが、だいたい人間が考えている都合のいいケースには相場は当てはまらないことが多く、もっと早い段階でこの構造がいきなり崩れだすリスクを考えておく必要がありそうです。
足元では年末は何もありえないと思っていたにも関わらずロシアゲート問題でいきなりとんでもない進展がではじめており、来年トランプがそのまま大統領を続けているかどうかすらよくわからない不確実性が突然市場に飛び込んできています。
これを思えば足元で可視化されていない材料が超楽観相場をぶち壊すリスクは十分にありると考えるべきでしょう。
個人投資家にとってはあくまで相場の動きについていく以外に利益を確保する方法はありませんが、市場参加者のほとんどが想定してる方向と逆方向のケースに対しても準備をしておくことが、この世界で生き残り、さらに莫大な利益を確保する大きな機会であることもしっかり頭に入れておくべきです。
相場の暴落はまるでいきなり雷に当たったり崖が崩れて一緒に奈落の底の落ちていくように突然やってきます。多くの人がおかしいと言い始めてから実際にそれが起きるまでにはかなりのタイムラグがあるのが非常に難しいところですが、来年に関してはそろそろ本格的な準備をしておくべき段階にはいっているように思われます。
(この記事を書いた人:今市太郎)