話題騒然の仮想通貨村に比べますと、今一つ元気がないのが為替村の年末の光景ですが、その大きな理由のひとつとなっているのが、動きの方向感がごく一部の通貨を除いて非常にわかりにくくなっていることがあげられます。
すでにクリスマス休暇入りしてしまったファンド勢の多くの市場参加者がクリスマス明けするまでは方向性がはっきりよくわからないというのも大きな理由になりますが、果たして足元でこうしたファンド勢のポジションがどうなっているのかをあらためてチェックしておきたいと思います。
ドル円のポジションは再度増加に転じている
Data CME
感謝祭前に結構減少したかに見えたドル円のロングポジションですが、感謝祭以降の状況は必ずしもそうではないようで、なんと12月5日段階ではドル円のロングが増加に転じていることがわかります。
市場の予想ではこのしこった形で残ったロングがクリスマスまでにさらに解消売りの対象になるのではないかとみていたわけですが、すべての投機筋ではないものの逆に買いを入れるほどですから、円高方向に動くという見通しとは違う見通しをこうした投機筋が持っていることが想像できます。
内容的には円ショート、つまりドルロングを増やしたというよりは円ロングを減らした形になっており、ドル円の下げ局面で買い戻してしまった投機筋が多かったことを示唆しています。
本来利上げに直面しているわけですからドル円が下落する要素はほとんどないわけですが、感謝祭に向けての下押しは一時的なだましであった可能性が結構高くなっているといえそうです。
ユーロドルもロングが増加
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一方、足元ではドル円よりさらにわかりにくい状況に陥っているユーロドルですが、こちらもユーロドル買いは若干増える傾向になり、ドタバタ劇を繰り返しているドイツの連立協議が一服すれば上昇すると期待する投機筋が多いことを示している状況です。
今年のユーロドルは一時もっと動くのではないかと期待されましたが、上値も1.2を超えたところで一旦止まってしまっており、予想に反した動きが非常に強まってきたことから、必ずしも取引しやすい通貨ペアではなかったことが改めて思い出される状況です。
米10年債保有状況について
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最後に投機筋の米10年債の保有状況もついで見ておきますと、こちらは驚いたことに12月に入ってからロングのボリュームが大きく減少しています。
ショートのボリュームが大きく減ったのではなくロングが確実に減少したからで、この秋にかけて非常に積みあがったロングポジションが解消している点がかなり顕著になっています。
これは将来的な金利上昇を意識しているのか、長短金利のスプレッドが狭くなりイールドカーブのフラット化が進んでいることへの警戒感なのかも知れませんが、とにかく状況に変化が訪れていることがわかります。
こうしてみてきますと、ドル円もユーロドルも積みあがったポジションは必ずしも解消しようとして動きになっておらず、全体としてドル高というわけでもないなかなか微妙な状況になっていることが理解できます。
気になるのはやはり債券保有がここへ来て急激に減りつつあることで、これが一体何を示唆しているのかにさらなる情報が必要になってきています。
FX市場はもちろん投機筋だけが動かしているわけではありませんが、相場が動き始める初動を投機筋が作るケースは非常に多くなりますので、彼らのポジションの傾き具合やその推移を見守ることは非常に重要です。
彼らの保有ポジションの変化はこの先の市場の変化を示唆することがあるからです。もちろん彼らも大きな間違いを冒しますから100%信用はできませんが、何を考えているのかだけは読み取ることができそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)