2017年の取引を通じて強く感じたのは、各国の政策金利差をベースとしてFXは動かないということです。
米国は今年年初から利上げを積極的に行い、本来はドル円では政策金利から言えばドルのほうがもっと上昇してもよかったわけですが、年間を通じてみますと、結局利上げには為替は必ずしも反応しないことが鮮明になってきていることを改めて実感させられました。
よく為替のアナリストがこうしたお決まりの分析をするのがFXの世界では定石になってきましたが、リアルなFX相場はまったくそうした教科書通りの動きをすることなく1年間が過ぎることとなってしまいました。
ドル円がもっとも追随したのは米国10年債金利のみ
今年は株価と為替の連動もほとんど見られなくなり、回顧その1でもご紹介したように各資本市場の相関性は徹底的に打ち破られることとなってしまいましたが、政策金利と通貨ペアの連動というものもほとんど見られなくなってしまい、結局もっとも動きに連動性がでたのが米国の10年債利回りという結果を示現することになりました。
米10年債金利のチャートは比較しやすいように上下を若干デフォルメしていますが、比較してみていただくとお分かりのとおりかなりよく似た動きをしていることがわかります。
したがって来年以降もドル円の動きを占うためには、米10年債利回りの推移を見守ることが非常に重要になりそうです。
FRBが利上げを行っても債券金利が上昇しない訳とは
基本的に中央銀行は政策金利を上げても短期金利は比較的コントロールできるものですが、長期金利についてはもっぱら市場の判断にゆだねなくてはならない状況で、完全にコントロール可能などと言い出しているのは世界広しといえども日銀ぐらいになっている状況です。
したがって米国でも政策金利は上昇させても10年債から先の長期金利はあくまで市場判断で決まっていくのが鉄則であり、この先米国経済が順調に推移するとは見込んでいない債券市場は非常に将来にたいして非常に厳しい見方をしていることがわかります。
結果として米債2年債と10年債の利回り差であるスプレッドはすでに51ベーシスポイントまでフラット化が進むこととなり、市場関係者は相場の暴落が近いのではないかと危惧し始めている状況です。
長短スプレッド差
ただ、一部にはこのイールドカーブのフラット化は非常に低い金利状況の中で示現しているものなので、たいしたことではないという見方も広がっており、来年2月に退任が決まっているイエレンFRB議長も同様に発言をし始めています。
ただ、2008年にイールドカーブがフラット化した時も以前は年利8パーセントといった高利の時代に起きたフラット化から相場が暴落したのであった問題はないと言い始めていた途端にリーマンショックによる暴落を示現していますから、金利の高い低いという話ほどあてにならないものはない状況でもあるのです。
このように今年のドル円に関していえば政策金利の推移よりも米10年債利回りの推移の影響を大きく受けており、ある意味で米国株式市場の動きとはまったく連動しない推移を続けてきたことが改めて理解できます。
ただし、株価の暴落は少なからず為替の下落にも影響を与えることになりますから、相場のネガティブな変化については引き続き来年も相当な注意を要することになりそうです。すでに2018年はリーマンショックから10年の歳月が経過することになりますので、年初から何がおきても不思議ではない状況です。
しかも12月で景気拡大から102か月目となっているわけですから、どこかで米国にリセッションが到来しても何の不思議もないところにさしかかってきています。今年の経験を踏まえて来年もより一層注意深い取引が肝要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)