今週シリーズでお送りしている2017年相場の回顧ですが、四回目は市場のプレーヤーの変化の問題を取り上げたいと思います。
相場を動かした米国金融業界のミレニアル世代
国内ではゆとり世代のほうが圧倒的に有名ですが、米国では2000年代に成人もしくは社会人となった世代が金融業界を動かすようになっており、今年に関してはかれらの投資行動が市場に大きく影響をあたえた年となったことは間違いないようです。
このミレニアル世代は米国のベビーブーマーの子供たちの世代ということになりますが、実社会に出てからはまだ10年以内であることから、なんとリーマンショックの株価暴落も知らなければ、2000年のITバブル崩壊も遠い昔のお話で、10年に一度大暴落がやってくるという米国の株式市場の中ではまったくもって暴落経験のない、ある意味で押し目は何でもかう能天気世代なのです。
しかもデジタルネイティブと呼ばれる世代で、IT関係のテクノロジー株への関心も高くFANGなどに集中投資を行って大きな利益を確保した張本人ということができます。
足元での米国の金融業界は裁量取引で利益を積み上げる人のファンドマネージャーは激減し、クォンツと呼ばれるようなシステム運用を管理する人間によって利益が確保されるようになっていますので、相場が下げたら躊躇なく押し目買いをしてくるこうした輩の投資行動は今年延々じり高を続けたNYダウの動きなどに少なからず影響を及ぼした存在といえます。
AIを実装したアルゴリズムがこの動きに輪をかけた状態
さらにこのミレニアル世代の動きを増幅する装置となったのがAIの導入です。これまでのアルゴリズム取引は早く動くという点では確かに人が敵わないものでしたが、実は高速売買だけではそれほど相場は儲かるものではありませんでした。
しかしAIが登場してからはチャートの形での類似性のあるものを過去のあらゆる市場データから探し出してくることに長けていることから、トレンドがでているとなれば、長い時間足でも短い時間足でも、かなりの高値からの状況でもまったく躊躇することなく相場にトレンドフォローでついていく動きを明確に示現するようになったことから、予想以上に強いトレンドを形成することにも一役買うようになっており、こうした動きも相場に大きな影響を与えるようになっているといえます。
NVIDIAに代表されるようなGPUといった仕組みは金融の世界にもかなり深く入り込んでいることが改めて理解できる状況ですが、面白いのはAIは将来を自ら予測するのではなく、あくまで過去のチャートの動きからもっとも足元の相場に近いものを探してきて当てはめようとすることです。
つまり人間が行う投資行動というものは過去に一定のヒントがあることが理解できます。
アノマリーも効かない相場
これまで市場にはさまざまなアノマリーというものが渦まいていたものですが、どうもこうしたミレニアル世代の台頭やAIの実装といったものはアノマリーにまで影響を与えるようになっているようで、今年は株価も7のつく年の大きく相場が下落する動きもとうとう年末まで見ることはできずに終わろうとしています。
来年はいよいよリーマンショックから10年を迎えることから過去の相場の動きをみるかぎりそれなりの下落がでてもまったくおかしくない状況が近づきつつありますが、果たしてどのような動きになっていくのかが注目されるところです。
人が裁量で売買すると高値ではなかなか買いからエントリーできないものですが、ミレニアル世代とAIはまったくお構いなしの動きをすることも相場にはかなり刺激的な存在であり、こうした動きがどこまで市場をリードしていくことになるのかにも注目があつまりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)