大方の金融市場のアナリストはほとんど触れていませんが、2018年まさかの事態として考えられるのが、日銀が出口戦略の舵を切るという事態ではないでしょうか。今回は2018年の私的相場予測のその3として日銀の出口戦略について想定してみることにしたいと思います。
長短金利差のない状態で地方銀行は瀕死の状態
2013年からの未曾有の「金融緩和」と「ゼロ金利」、マイナス金利政策の継続は確かに国の借金の金利負担を大きく下げ、ある意味で日銀の国債買い入れは財政ファイナンスにも似た状況を継続していますが、金融機関はかなり疲弊しておりメガバンクでも利益を確保することがかなり厳しくなっています。
また、なにより地銀はもはや利益を確保するすべがなくなりつつあり、このまま日銀な今の緩和政策を続けているわけにはいかないところまで事態は深刻化しているといえます。
当の日銀にとっては積極的に国債を買い入れることはなくても金利は安定していますし、為替も米国から文句がでるような高い水準ではない中庸レベルで推移しているわけですから、実に居心地はいいのかもしれませんが、長短金利のスプレッド差で食べている金融機関はそうは言っておれず、もはやぎりぎりのところにまで追い詰められている状況にあることがわかります。
金融庁は地銀の統合などを考えているようですが、このまま規模だけ大きくなったところで利益の源泉がない以上は、あまり状況は変わらず、そろそろ日銀の政策を見直さざるをえないところにやってきているといてます。
日銀にとっては結果的にコントロールできなくなるようなインフレが示現しないかぎりは、多少金利を戻すコントロールにでても大きなリスクはないと感じているのでしょうが、今後インフレが全く起こらないという保証はどこにもなく、米国発などで先進国でもインフレ傾向が明確になると、金融政策もかなり厳しいところに追い込まれることが予想されます。
ETFの買い付けはもはや限界か
2013年以降黒田バズーカ2では年間6兆円まで買い入れ額を増やしている日銀のETF購入ですが、このまま買い進めば、2022年ごろにはほとんどの一部上場企業が日銀の関連会社になってしまうほどの保有率になり、とてもではありませんが尋常な状況とは言えなくなってきているのもまた事実です。
足もとの相場でも上位22社は日銀の保有率が10%を超えており、20%を超えるレベルなら本来は持ち分法適用会社として親会社の連結決算に反映させるレベルですから、ETFなので直接株式売買ではないものの、すでに異常なレベルにさしかかっていることがよくわかります。
野村証券の試算では2017年だけでも日銀のETF買いによる株価押し上げ効果は1500円程度あるそうですから、これまでの合計による下駄ばきはほぼ5000円近いとの見方もあり、日銀がETFの買い入れを減額から終了するというアナウンスが出たとたんに、いきなり1000円や2000円の相場下落が起こることは十分に考えておかなくてはなりません。
為替は最近では株の上昇にはついていかなくなっていますが、下落については非常に敏感に反応することになりますから、下方向に10円程度の下落はいとも簡単に起きるリスクは想定しておく必要があるのではないでしょうか。
もちろん保有ETFをすぐ手放すわけではありませんから、株価の下落がいきなり5000円ということはあり得ませんが、調整がでるリスクを抱えていることだけはしっかり覚えておく必要がありそうです。
こうした日銀の政策転換は年明け早々にでるとは思えないものの、比較的早い段階で明確になる可能性があるのではないかと想像します。
ほとんどの市場参加者が当面現状維持をすると思っているところに、こうした政策が登場すればかなりのインパクトになることも予想され、2018年の相場の中では結構大きな影響を与えることになるのが日銀の政策変更なのではないでしょうか。
(この記事を書いた人:今市太郎)