ドル円は今週に入り、大した材料もないのに市場の思惑だけで大きく円高へとシフトすることになり、すでに高値から2円以上も円高が進む形になってしまっています。
年初の1月は初動の方向からいきなり反転して逆の方向に動くことが多くなるのがこれまでもアノマリーとして確認されていますが、今年もどうやらそれに近い状況で、一旦年明けに投機筋主体で買い上げたもののそれ以上の上昇させることに失敗したのも大きな要因になっているようで、今度はいきなり下方向を攻める展開へとシフトしています。
下落の主たる要素は思惑ばかり
FXの相場が動くのは事実ばかりではなく市場の思惑が大きく働くこともあるわけですが、今週はまさにそれでいくつもの複合的な思惑がドル円を大きく押し下げる結果となっています。
まず日銀の減額オペがこの先出口戦略に近づくのではないかとの思惑からドル円を押し下げることとなっていますが、実際のところはロングに傾き過ぎたポジションが112円割れで一斉に損切となったことなども影響しているようで、巷で言われているほどこの材料が本質的な下落要因なのかどうかはよくわからない状況です。
また111円台に入ったドル円にブルームバーグの中国政府関係者からの情報として米国債買い入れ中止もしくは減額といった観測報道が追い打ちをかける結果となってしまい、ドル円相場は一気に111円台初頭まで押し下げられてしまいます。
しかしその後中国政策当局がブルームバーグ記事が誤っている旨の発言を出したことから一旦は111円台後半の80銭台まで戻すこともありましたが、NYタイムに入って米国の12月生産者物価指数の低下や先週分新規失業保険申請件数の増加をきっかけに、ドル売り・円買いが優勢となり本日早朝の午前4時前後には111.05円まで押し込む場面もありました。
しかしそこからの下値は結構堅く、何かの買いが並んでいる気配もあり、結局ショートカバーが入って111.20銭台で東京タイムをスタートさせることになります。
とうとう米債の金利上昇にもついていかないドル円
ところがここへ来てとうとう米債の利回りが上昇するのにも、ドル円がついていかなくなってしまったのは、相場の先行き予想にとって非常に具合の悪い状況になっています。
これまでは米国の10年債利回りが上昇すれば確実にドル円も上昇してきたものでしたが、この相関が崩れてしまうと、ここからドル円が上昇するのか下落するのかがよくわからなくなりますので、かなり慎重な売買が必要になりそうです。
そもそも米国債を中国が買わなくなるとなぜそれだけで米国売りになるのかも今一つ釈然としませんが、どうも投機筋を中心に今度はドル円を売りこむという仕掛け売買が出ている可能性もありますのでどこかでこの動きが頓挫することも考えておく必要がありそうです。
新旧債券の帝王の異名をもつビルグロースもジェフリーガンドラックも新年に入ってから相次いで債券相場が弱気入りをしていることを示唆しはじめており、この先株式市場も一定の上昇から下落に転じるリスクが高まりそうですが、米国債金利の上昇についていかずいきなりドル円が株価の下落に連動することもありそうで、結構ここからの相場の動きの見極めが難しくなりそうです。
ドル円については111円台を割り込むと結構下値を模索するリスクもありますが、正直なところ足元の材料だけでそこまでドル円が下押しするのかどうかはよくわからず、110円台中盤ではこれまでも何度も相場が止められているだけに逆に絶好の買い場になることも検討しておきたいところです。
とにかく上下に振り回される相場ですが、予断をもたずにしっかりチャートで検証しながら動きについていくことを心掛けるべきでしょう。
(この記事を書いた人:今市太郎)