ECB理事会が近いとはいえ、どうもユーロドルとドル円の動きが不思議な雰囲気になっていると思いきや、やはり登場してきたのがダボス会議に参加したムニューシン米国財務長官のドル安大歓迎発言でした。
ムニューシン氏は記者会見で「明らかに弱いドルはわれわれにとって良い。貿易や各種機会に関わるからだ」と述べたことでドル安は加速、すでにユーロドルは1.24を超え、ドル円はすんなり109円を割るところまで円高が進んでいます。
為替の問題に言及することはトランプ政権にとってはほかのどんな政策を行うことよりももっとも金のかからない口先介入だけで実現できるだけにいつかは登場するものと思われてきましたが、このタイミングにとうとうその発言が顕在化してくるとは想定していなかっただけに意表を突かれる形となってしまったことは間違いありません。
ダボスでは米国のチアリーダーを目指すトランプ
トランプはウォールストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、ダボス会議に出席する目的は「米国のチアリーダー」になるためだと語っていますし、ムニューシンによれば、トランプはアメリカ第一の経済政策を大いにアピールするために出席するとも伝えられています。
米国の大統領がダボス会議に出席するのも2000年のビルクリントン以来実に18年ぶりとなりますが、さらにムニューシン財務長官に加え、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題)やティラーソン国務長官、ロス商務長官も随行するという最大規模の出席になり、大暴れの発言が飛び出すとともにその都度ツイートなどにもその意向が飛び出すことが予想され、為替相場は想像以上に荒れそうな雰囲気になってきています。
米国が考えるドル円のドル安は一体どのレベルなのか?
テクニカル的にはドル円は昨年9月の107.300円レベルを目指すことになりそうですが、別に米国は107円台が心地よいレベルだと言っているわけではありませんからさらなる下落を模索する展開もありえそうです。
東日本大震災後の75円レベルと過去数年における高値の125円の半分ということであれば、1ドル100円が浮上してくることになりますが、米国が対日本円でどのあたりをドル安水準とみるかが大きな問題になりそうです。
ただEUサイドは過度なユーロ高を猛烈にけん制してくることは間違いありませんので、このダボス会議からの要人発言の応酬はさながら為替戦争の勃発といってもいいぐらい神経質な動きを示現させる可能性がありそうです。
米国追随型でなんら強気の発言ができない日本にとっては、1日1円程度づつ下落するような相場では為替介入すらできる状態ではありませんし、これまでの経緯を見ても100円を大きく下回らない限り口先介入すらできない状況に追い込まれるリスクも高まっています。
トランプ政権誕生以来ドルインデックスは低下傾向にありましたがさらに安値を模索する形になってきていますので、ここからはレベル感だけでドル円を買い向かうのもユーロドルを売り向かうのも相当気をつける必要がありそうです。
ダボス会議はさすがにノーマークであっただけに為替関連でこれだけ大きな影響がでるとは夢にも思いませんでしたが、米国の保護主義が新たな形で明確に会議で示現してい来ることは間違いなく、世界各国のリーダーがどのようにそれに反論するのかも大きな関心事となりそうです。
米債金利上昇下でのここまでの円高は違和感満載
確かにドル円は政治的な色彩の強い通貨ペアですから、米国の意向でドル安が進む局面はこれまでも何度もみられたことですが、ここまで米債金利が上がっても無理やりドル円が下がり、ユーロドルが上昇する相場には違和感が感じられることも確かで、そもそも米国の株式市場がこのまま高騰を続けるのかについてもかなりの不安が残る状況です。
米国の株価のほうはほとんどなんの影響も出ていませんが、さすがに日経平均はドル安円高をうけて先物が下落してきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)