早ければ今年中にも個人投資家に対するレバレッジ規制がかかりそうな気配のFX業界ですが、一部の店頭FX業者はFXから仮想通貨ビジネスに乗り出そうとしている状況です。
これまで売上低迷必至なのだからまあ仕方ないのかもしれないと思っていましたが、コインチェック騒動を見ていますと、店頭FX主体の企業が仮想通貨事業に乗り出してひとたび今回のような大量のハッキングにあったりして事業が継続できなくなったり破綻に追い決まれるような事態になったとき、本来本業であったFX業務に支障をきたすことがないのか非常に心配になりました。
GMOやDMMの仮想通貨会社はFX事業の子会社ではない
すでに先行して事業をスタートさせたGMOコインやDMMビットコインの場合は、GMOインターネットやDMMグループの企業の一つということで、直接的にFXビジネスの子会社としてスタートしているわけではありませんから、ひとたび問題が起きればこのグループ全体でどうするのかを考えることになるものと思われます。
まあ決してそれなら安心だという話にはならないわけですが、万が一の場合にはグループとしてどう支えるかの話になってきますから、ある意味で単独の仮想通貨取引所ビジネスよりは安心なのかもしれません。
ただ、取引所がかかえるシステムやセキュリティの脆弱性がこうした企業なら著しく改善しているかといわれれば、そればかりはよくわからないのが実情です。
怖いのは店頭FX専業会社の参入
恐ろしいのは店頭FXを専業としてやってきた会社が子会社を立てて、仮想通貨取引所ビジネスに乗り出すケースで、まだはじまったばかりですがヒロセ通商などはおそらくこの形になるものと思われます。
国内のFX業者は信託保全で顧客から預かった資産を事業運営にまわすことができないような仕組みをもっていますから、闇雲に投資資金が危ないということはないものの、ビットコインが大量に盗まれた場合には被害額は1000億を超えるケースも考えられます。
ひとたび事業破綻ということになれば、FX事業の運営にも大きな影響がでることは必至で、資金は戻るといっても管財人を通じてえらく時間をかけて返還されることになりますから、およそ投資効率を欠く行為になりかねない状況です。
そもそも店頭FX業者の場合、ハッカーからのサーバー攻撃でパフォーマンスが著しく下落して取引に影響がでるといった攻撃は多く経験しているものと思われますが、今回の事件のようにウォレットから秘密鍵が盗まれて仮想通貨がごっそりなくなるといったような問題へのセキュリティ対策に一日の長があるわけではありません。
取引上のプロセスはFXときわめて似ている仮想通貨ですが、仮想通貨FXだけならまだしも通貨そのものの取引所ビジネスに乗り出す話になるとFXトレーダーとしてもその事業内容をよく吟味する必要がありそうな気配です。
2015年スイス中銀ショックでUKに本社のある外資系のFX業者アルパリが親会社の事実上の破綻から国内でのビジネスをいきなり閉じることになり、資金が戻るまで多くの利用者がやきもきさせられるという事態が起きたのは記憶に新しいところで、ややもすればトランザクションボリュームから言うと仮想通貨のほうがはるかに店頭FXより大きくなりかねないだけに仮想塚ビジネスに手を出すFX業者の経営がおかしくなりだした場合FX取引に支障がでるケースも十分に想定できます。
これまでは資本金の大きさや自己資本規制比率、取引ボリュームなどで店頭FX業者を評価していきましたが、これからはどのような形で仮想通貨に関わるのか、そしてそのビジネスが本当にダイレクトにFX事業に影響をもたらさないのかを粒さにチェックする必要がありそうです。
本来ならば仮想通貨FX業務だけに絞るというのもリスク軽減では大きいと思うのですが、どうもそうはならない状況のようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)