今回の2月5日月曜日のNYタイムの瞬間1600ドル安の株価暴落劇は1987年の10月暴落と区別するために「ワイルドマンデー」と名付けられたようですが、下げ三波や五波などと言われるように一回だけの暴落ですぐ立ち直るわけではなさそうなので、ここからも下落局面に遭遇しそうな状況です。
米国の株式市場はたった2か月前程度のところに押し返されただけなのでたいした話ではないといった苦し紛れのポジショントークをする業界関係者も見られますが、今回の損失規模はやはりそんなに楽観的で、かつ簡単にリカバーするような内容ではない状況のようで、大地震の被害の爪痕が徐々に時間が経つにつれて判明するように少しずつその内容が見え始めてきています。
既に一部ファンドは解散、破綻へ
まだ今回の暴落の処理はすべて終わったわけではありませんが、VIXの上昇による大きな損失は最低でも1兆ドル規模、場合によっては2兆ドルという試算がではじめており、リーマンショック時の株式市場の損失1兆ドルとほぼ互角の規模であることがわかりはじめています。
下落幅はまだまだ大きなものになはなっていないように見えますが、過剰流動性を反映して過去最大規模のVIXの空売りは相当業界内の市場参加者にダメージを与えていることがわかります。
別に危機感をことだらあおる必要はないと思いますが、事実としてこうした感じになっているということだけはしっかり認識しておく必要がありそうです。
昨年1年間あまりにもボラティリティの低い相場が続いたことからこのような利益と想定損失のバランスに著しく欠ける商品にまでプロも個人投資家も手を出してしまっていることがリーマン危機とは別の形で市場のリスクを急激に高めていることがわかります。
決定的な損失問題はこれからあからさまになるものと思われますが、一部のファンドはすでに解散を決めていますし、破綻という最悪の形を示現し始めているファンドも出始めており、金融機関でも損失を穴埋めするために利益のでている証券の換金が進む可能性がではじめています。
オプションSQでめちゃくちゃ売られた日本株
ここのところSQのたびに事前に大きく売り込まれる日本株ですが、今回のオプションSQでも相場の下落を演出することでオプションで金を稼いだ向きがかなり多かったようで、これが今回のワイルドマンデーとさらに連携したものなのかどうかははっきりしませんが、足元の損失の穴埋めに必死の向きも多くなっていることが感じられます。
今後損失を穴埋めするために利益のでている資産を売却してドル転する動きも出る可能性があり、為替の世界でいうと一時的にドル高に動くことも想定しておかなくてはなりません。
今回の下落はそれほど大きなものではないという論調と、全く逆にかなりの被害であるといった悲観的な見方の両方が市場に動き始めていますが、中央銀行バブルのお仕舞いのはじまりなのだとすればそんなに楽観的には思えないのが現実で来週以降さらに今回の損失の実像が見えてくることになるのではないでしょうか。
足元では無風のドル円はやがて円高に
今のところドル高円高が続いていることからドル円はほとんど動かない状況が継続中ですが、やがてドル安円高方向に動きそうな気配濃厚で、なにかの理由からドル円が戻した場合にはそこが絶好の売り場になりそうな状況です。
暴落が起きると人もAIも過去の事例を当てはめて将来を予測したくなるものですが、今回の暴落は2008年からすでに9年経過しており、これまでにはなかったレベルの過剰流動性のもとで起きているものだけに、不動産バブルやITバブルという特定セクターだけで起きたバブルとは様相が異なるのは当たりまえであらゆる資本市場にその影響がでる可能性があることだけは間違いなさそうです。
動きがわからないと思ったらまず一旦立ち止まって様子をうかがう相当な用心深さが必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)