読み込み中...19日のNYタイムはプレジデンツデーの休場であることから静かな相場展開となっていますが、せっかく落ち着いた時間になっていますので、今回は足元のトランプの政策と比較されやすいレーガノミクスがなぜ失敗したのかについてまとめてみたいと思います。
80年代強いアメリカの大失敗政策
レーガノミクスは言わずと知れた元俳優からとうとう大統領にまでなってしまったドナルドレーガンが実施して結果的に大失敗に終わった政策の名称です。
この政策を箇条書きにしてみますと足元のトランプの政策に非常に似ていることが改めて理解できます。
・法人や富裕層を中心とした資本家の減税
・社会福祉の削減
・軍事費の拡大
・規制緩和
というものが基本で基調は強いアメリカというある種の右翼政策ともいえるものだったわけです。
しかしこの政策は結果的に猛烈な悪いインフレをもたらすようになり、金利は猛烈に上昇する羽目になります。当初強いドルはアメリカの象徴であるとしてきたわけですが、世界的にマネーは米国に流入したものの、ドル高自体は著しく米国企業の国債競争力を低下させることとなり、輸出減で経常収支は悪化することになります。
また軍事費の無闇な増大は財政赤字を拡大させることとなりそもそもの赤字財政とともに双子の赤字などとも呼ばれるようになってしまいました。
苦しさに耐えられなくなった米国は先進各国を集めて1985年プラザ合意で無理やりドル安政策を断行せざるをえなくなりますし、この影響を受けて日本はバブル経済が走ってしまったという見方をする学者も多く存在します。
過去の米国の大型減税の結果を見ますと初年度はそれなりの成果が経済指標の数値に現れるものの次年度以降はほとんど影響しなくなるという非常に短命に終わる結果が多く、今回のトランプの政策ではもともとその原資がなかったところで実現していますから、借金だけが無闇に増えてしまったことだけは間違いありません。
トランプの負債規模はなんとレーガノミクスの20倍規模
既に30年以上も前のことですから金額規模だけで比較することはできませんが、レーガノミクスによって進んだ財政の負債総額は今のドル円レートでみれば110兆円ほどですが、トランプによる負債総額は2200兆円とざっと20倍にもなっている点が気になります。
まあブラックマンデーのときのNYダウが2000ドルですから、2万5000ドルの今から考えれば負債も20倍でもそれほど驚くべきものではないという見方もできるわけですが、ちょうどこの時期に発行した超長期債が召喚を迎える米国はあらためて借金経済の恐ろしさをかみしめる結果となっていることは間違いありません。
なぜ金融市場はいきなりこの莫大債務政権にびびりはじめたのか？
当初今年もトランプ相場で11月の中間選挙までは株式市場もまったく揺るがないのではないかというえらく楽観的な見通しがファンド勢にも行きわたっていたわけですが、1月末の一般教書演説でその政策の中身がつまびらかになりだしてから市場の反応は劇的に変化しはじめ、結果的に債券金利の上昇は決していい上昇ではなく悪い上昇として捉えられるようになり、このあたりからまったくドル円は債券金利の上昇についていかなくなりだしており、株式市場も債券金利の上昇に痛くナーバスになりはじめていることがわかります。
1080年代初頭には米国の政策金利はなんと15％を超える水準まで上昇したことがあったわけですから、足元の金利水準が超低金利で状況が全く違うことは確かですが、この債務の膨張は日本の国債乱発借金経済をまったく笑えないぐらいの急膨張になっているわけですから、金利上昇局面でプラスに働くことが何もないのは明白です。
適温楽観相場に浸っていた投機筋もさすがにこれはまずいのではないかと気づかされてしまったというのが正直なところなのではないでしょうか？
トランプに比べるのレーガンの生活は清貧そのもので決して贅沢三昧ではなかったようですから、人となりは別ものといえますが、双方ともに政治と関係ないところから現れた人物だけにオーバーラップすることも多く、レーガンは現役時代から既に認知症で単に演じていただけと言われる部分も多く、問題発言や不思議な言動が多いトランプにその姿が投影されて見えるのもある意味では仕方ない部分といえるところもありそうです。
いずれにせよ急に夢から覚めたようにトランプ相場が逆戻りし始めていることは非常に気になるところで、為替の世界で完全に振り出しに戻るならドル円は101円になっても不思議ではないところに差し掛かり始めています。
相場の先行きを断定するのはきわめて危険ではありますが、ここから先の方向感にレーガノミクスの失敗を認識しておくことは結構重要になるのかもしれません。
（この記事を書いた人：今市太郎）
