米国のトランプ政権がいよいよ打ち出し始めた関税政策ですが、突然登場して市場が嫌気したような話になっているものの、これは前々から選挙公約としても登場していたもので相場の下げの後講釈に使われている可能性も高いように見受けられます。
ここからは中国とEUの対応次第ということになりますが、どこまで米国が本気で対応するかと世界各国の反発次第によっては米国から資金がさらに逃げ出す可能性もあり、為替にとっても非常に大きな影響が現れそうです。
状況次第で債券も株も為替も下がる米国
ここから中国、EUの逆制裁がどのように働くかでも本格的な貿易戦争になるかどうかが見極められそうですが、とりあえず先行して動く金融市場では債券も株も為替もトリプルで安くなっていく可能性は否定できません。
とくに中国は米国の債券市場のお得意様ですから、彼らが嚇かしの意味を込めて債券を売り始めることにでもなりますと、もちろん彼ら自身にも被害は及びますがそれ以上に米国の金融市場がかなりの混乱状態になることが予想されます。
3%超はもとより4%に近づくような米国10年債利回りの示現は米国の株価を大きく押し下げる要素になりますし、これに連動してドル円が下落するリスクは非常に高くなります。
そもそも米国のこうした突然の理不尽なやり方から米国市場に集まっていた余剰資金が国外に逃げていくことは容易に想像できるもので、おそらく株価や債券と関係ないところでも資金の逃避でドル安が進む可能性がではじめています。
一旦106円に戻したドル円は再下落のリスク拡大
足元では一旦106円台に戻したドル円ですが、ここから上昇を期待するのはかなり難しそうで、この貿易戦争に発展しそうな米国の関税騒動の成り行き次第ではかなりきついドル安円高が示現しそうです。
日経平均も週末のSQに向けて一旦相場が持ち上がりそうですが水曜日以降にファンド勢の仕掛けがでればまたひどく売り込まれる危険性は高く、週末の米国の雇用統計で再度米債利回りが上昇することになると今週中にもドル円が105円を下抜けることも想定しておいたほうがよさそうな状況になってきています。
相場が一息つくと下落ポイントは絶好の買い場であったと豪語する人が非常に多くなっていますが、いまの状態がエリオット波動のどこに位置しているのかが大きな問題で、ここからかなりひどい下げがやってくると前回の下落を大きく突き抜けるリスクはかなり高まることになります。
もともと米国はドル安を容認していますから、主要通貨に対するドルの下落は全く問題ないでしょうし、日本も面と向かってドル安を批判することはできず、為替介入などもほとんど100円から上で実現できる見通しは全くありません。こうなると短期間にかなりの勢いでドル円が円高になることも覚悟せざるを得ない状況です。
20世紀初頭までの世界経済ならこうした貿易戦争はそのままリアルな戦争につながるほどクリティカルな状況でしたから、今回のトランプの仕掛けも公約の履行とはいうものの本当に100パーセント実現するつもりならかなり荒れた相場展開が続くことが予想されます。
そもそも株価が上がると自分のおかげと豪語するトランプですが、ウォールストリートとの関係からいえば株の暴落などあまり関係ないと思っている可能性はかなり高く、むしろ大幅な財政出動がやりやすくなるのでトランプのおかげで立ち直ったというイメージも醸成しやすくなりますから、とうとう最後まで一歩もひかずに滅茶苦茶な状況になることもありえそうです。
3月相場はそうでなくてもFOMCの利上げに注目が集まっていますが、それと並行する米国起因の通商問題は為替市場に驚くべき展開をもたらす可能性が出てきていると言えます。
(この記事を書いた人:今市太郎)