昨晩のECB理事会の政策金利発表にともなう動きが熾烈を極めることになってしまいました。
まず、フォワードガイダンスの修正がヘッドラインで踊り「必要ならば債券購入プログラムの規模を拡大する」との文言を削除との報道がでたことから一気にユーロドルは買いあがることとなりました。
しかしドラギECB総裁の記者会見からのトーンは必ずしもタカ派ではなく相場は下落を始めることとなります。そして大きく下げ始めると今度は倍返しで損失を取り戻そうとするような動きが示現しとうとう上げの2倍強の下落となってしまったわけです。
昔からECB理事会後の記者会見にはよくある光景
ECB理事会の政策金利発表とその後のドラギ会見というのは結構こういう動きをすることが多いのですが、ヘッドラインに踊らされて買い上げると印象の違う発言をドラギが行っていきなり相場が反転という状況はこれまでにも何度もみてきた記憶があります。
ここのところ為替相場は停滞気味だったことからこうした材料に必要以上に市場参加者が反応して相場の上下に加わってしまったこともひとつの原因かもしれませんが、報道のヘッドラインだけ読み込んで反応する稚拙なアルゴリズムについていくとろくなことはないということを改めてかんじさせられるものとなってしまいました。
EUにとってはユーロ安は実に好ましい状況ですからECBもそれに応えるためにこうした市場とのコミュニケーションをとっている可能性もありそうですが、とにかく思い込みは禁物であることを改めて感じさせられるような相場状況でした。
ドラギも怒り心頭の米国関税政策
市場ではトランプの関税政策のサインオフにカナダとメキシコが入っていなかったことからああよかったといった妙な安堵感に包まれた状況になっていますが、EUと中国を相手にした部分ではまだ本格的な戦争状態の火種を十分に残しており、しかもそれがとんでもない抗争劇につながるリスクはまだしっかり温存されている点が非常に気になります。
グローバルエコノミーという発想がここ10年以上続いてきたわけですし、ネットを中心としたビジネスはすでにボーダレス化が進んでいるというのにその領域でももっとも恩恵をあずかってきた米国が真っ先に保護主義に走るとはだれも予想していなかったことではないでしょうか?
昨日のECBドラギ総裁の会見でもあからさまに米国への怒りを示していた総裁でしたが、EU自体はもっと激怒していることは間違いなさそうで、これが単なる政治ショーに終わるかどうかはまだまだ判断がつかない状況といえます。
自国通貨安戦争も再開の恐れ
貿易関連でこうした関税による制裁が当事国双方で行われるようになると、またしても危惧したくなるのが為替の自国通貨安戦争の再開ということになります。
1985年のプラザ合意では米国の言うことを先進主要国が聞き入れた形になりましたが、足元の状況ではなんでもハイと言わざるを得ないのは日本ぐらいしか残されておらず、とくにEUと中国は猛烈な反発をしてくることが予想されるだけに、この話は相当根の深いものになるリスクをもっています。
為替相場自体はドル円などを見ていても非常に動きが限定的でどんよりとしたムードが漂っていますが、激しい戦争状態になるのはまだこれからの話で、あまり呑気にはしていられない状況になりつつあります。
これまでの相場状況とどうも雰囲気が違うということは多くの市場参加者が感じとりはじめていますが、こうした不安が一気に解消することはないままに足元の相場は不安定な状況を継続させていきそうに思われます。
本日はまたしても米国雇用統計ですが、さらに今の相場の流れに変化が起きないかどうか粒さに見届けてポジションを作っていきたいところです。
(この記事を書いた人:今市太郎)