22日にホワイトハウスで日本について語ったトランプ大統領の内容はかなり辛辣なものとなり貿易戦争の相手が必ずしも中国一刻ではなく日本もその厳しい対象となっていることを改めて確認させられる事態となりました。
トランプは、安倍首相を偉大な男で私の友人と前置きしながらも、『安倍総理と話をすると総理はいつも微笑んでいる。この微笑みはこんなに長い間、米国を(貿易で)出し抜けたなんて信じられないという笑みだがこういった時代はもう終わりだと述べて、日本との貿易関係についても大幅な改善を求める考えを示したのです。
先ごろ決定された米朝首脳会談も重要な同盟国のはずの日本は完全に蚊帳の外で話が進んでしまいましたし、重要な同盟国とされた日本との関係もトランプにとっては決して特別なものではないことを明確に示唆しはじめている状況が露見し始めています。
トランプ一流のやり口がさく裂
トランプと不動産事業で取引のある人間が一様に口にするのは、トランプの印象は最初がもっともよく、その後はどんどん悪くなるということです。
これはあえて作為的に展開されているもので、大統領当選後の一番乗りで土産をもって出かけていった安倍総理を歓待し、その後も日米首脳会談でゴルフや食事に時間を使い両国の関係がきわめて良好であるかのように振る舞ってきたトランプのアプローチはまさに不動産屋で培われたものにすぎず、近寄ったところでばっさり切り捨てるというのが彼独特の手法であることをいまさら気づかされる状況となっています。
これは政権発足当初にやたらとゴールドマンサックス出身者をとりこんで、親ウォール街政権であるかのように振る舞ってきましたが、気がつくとムニューシン以外はばっさり切らており、エクソンモービル出資のティラーソンの更迭で比較的穏健でバランス感覚のある民主党的なゼネラリストも放逐するなど、その取り込み切り捨ての戦法はここへきてかなり先鋭化しています。
この流れからみれば安倍総理に対する対応もその一つで、ある意味かなり一貫性のあるものとなっています。
世耕弘成経済産業相も典型的な役立たず
安倍首相がトランプを大きく見誤っているわけですから、その政権内の世耕弘成経済産業相が楽観視して大失敗するのは当たり前の話です。
ライトハイザー氏らに日本企業が雇用創出など米経済に果たしてきた貢献を説明し、日本を除外するよう働き掛け、日本は最重要な同盟国だから大丈夫と高を括っていたところ、日本は鉄鋼・アルミニウム輸入関税の適用対象としてしっかり残ってしまうというとんだ読み違えを起こしてしまっています。
裸の王様は日銀の税制ファイナンスでばらまき外交してるだけ
結局気がついてみますと、ここ5年安倍総理はかなり積極的に様々な国を回ってまるで外交のエキスパートのように振る舞ってはいますが、とどのつまり日銀が必死に買い支えてくれる国債のおかげてある種の財政ファイナンスを受けている中で、緊縮を全くきにせずに借金のなかから他の国に金をばらまきをしてきただけで本質的な関係構築には乗りだせていないことが改めて顕在化しているといえます。
しかもこうした総理の動きをけん制できる人間も存在しておらず、裸の王様状態が続いてきたことは明らかです。
最近、株の関係者からは森友問題など長々国会でやっている状況ではないといった指摘も多くみられていますが、貿易問題や国際関係の問題を突っ込んでやりとりしていたら果たして米国に何か物申せることができたのでしょうか?
あるいは北朝鮮との緊張問題に日本がイニシアチブをとって状況を変化できたでしょうか?
個人的にはその答えは全くのNOであり、この内閣はいろいろやっているようなふりはしていますが、それこそ政策立案の細かな部分は結局役人に頼っているだけで、本質的に能力の高い内閣ではないのはもはや明白な状態に見えます。
日米の政治的状況を鑑みればドル円はドル高にはならない
前置きが長くなりましたが、為替の世界にフォーカスしてみた場合、日本も例外なく米国の通商不均衡の改善対象として徹底的にやりこまれることが明白になっているわけですから、鉄鋼やアルミ以外の項目で批判の矢面に立たされることは間違いなく、為替についてもある意味無言の圧力を受けることは明白です。
最近の為替や株の状況はファンダメンタルズとまったく関係ないと麻生財務相は的外れなことを口にしていますが、まさに米国から追い込まれている状況こそがファンダメンタルズであり、外国人勢が嫌気して株を買わないのもある種の一貫性ある状況といえます。
105円を下抜けたドル円はNYタイムでも何度となく105円台回復を狙いましたが、結局のところまったく定着できずに週の取引を終えようとしています。
NYダウは23日も大幅下落となっており、完全にピークアウトして二番底を探しにいく動きを見せています。4月の頭というのはドル円も下落しがちなシーズナルサイクルですが、来週以降いよいよドル円はさらなる下値模索に走るリスクを相当意識せざるをえない相場環境が整い始めています。
(この記事を書いた人:今市太郎)