トランプ大統領については、ほとんどの金融市場参加者が甘く見ていた、茂しくは誤解していたようで、結局のところ彼は1年ちょっと前に行った就任演説の内容をあまりにも愚直に進めているだけに過ぎないことが改めて感じられる状況になってきました。
過去の米国大統領は就任時に心地よい文言を並べて国民の期待を高めるような内容を演説するのが常で、それが現実に実現されてきたかと言えば、オバマなどもほとんど実現には至らずに終わってきたのが実情でした。
しかしトランプの場合には極論と思われたような内容を本当に実現し始めており、よくよく就任演説を読み返してみると足元の状況は本当に公約通りの動きになっていることを実感させられます。
とくに彼が演説の中で強調してきた2つの簡単なルールに実際に従ってものごとを決めていることがよくわかります。この二つとはアメリカ製品の商品を買い、アメリカ人を雇うということです。
あらかたの金融市場参加者も海外の人間も話としてはこの二つのルールは理解できるものの、本当にここまで徹底するとは思っていなかったわけですから、実際に事が始まってみるとみな大慌てになっているというのが足元の状況なのでしょう。
中国の報復関税措置発表で市場は狼狽
4月4日中国財政省は米国への報復関税として大豆、自動車、化学製品、一部航空機、トウモロコシ製品など農産物を含む米製品106品目に対し、25%の追加関税を課すと発表したことから市場はひどく動揺することとなり、株式市場から商品市場、為替まで大きく下げる動きとなりました。
しかしNY市場では最初こそ大きな下げだったものの次第に落ち着きを取り戻す格好にはなっています。しかしこの状況は決して落ち着いたものとは言えず今後こうした関連のニュースがヘッドラインを踊ることで常に相場が下落することになるのはもはや間違いなく、FX取引も非常にやりにくくなってきているのが実情です。
交渉のための強硬姿勢という楽観論は間違いの可能性も
当初このトランプの政策は交渉を有利に展開するための強硬姿勢を示すもので、水面下で交渉が進んでいるので大した問題にはならないといった楽観論も飛び交いました。
しかし、中国からもかなり具体的なカウンターの制裁措置が飛び出してきているところを見ますと、短期間に簡単に決着を見るような問題ではなくなりつつあり、双方がエスカレートした場合にはもっと大きな問題に発展するリスクがちらつき始めています。
中国の対抗措置は今のところ米国に決定的な打撃を与えるものではないという見方もありますが、トランプが進めているのは過去にあったような一時的な措置ではなく恒久的な法律の施行となりますので、そのインパクトは長期にわたり持続する点も気になるところです。
こうした関税問題は特定国だけ反故にするわけにはいかなくなりますから、そう簡単には解決しないリスクのほうが高まるのは当然で、なにより中国のとの関係もさることながら自国の消費にも影響を与えることは必至で、コストプッシュインフレが加速してしまうという危険性もかなり高まりつつあります。
確かにトランプの考えているルールはきわめて単純ではありますが、それを推し進めようとした結果想定外の大変な事態を副次的に引き起こしてしまうリスクはかなり高まっており、今年はトランプの政策そのものが、相場暴落のテールリスクとなってしまう可能性すら出始めている状況です。
昨年までトランプラリーなどと呼ばれて浮かれた相場は今年すっかりその様相を変えようとしており、為替についてもドル高が示現することはさらに期待しにくく、より一層の注意が必要になってきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)