中国が人民元の切り下げを検討開始という報道が飛び出し市場では話題になっています。今のところあくまでも米国に対する脅かしに過ぎず実際にはやらないのではないかとの懐疑的な声も聴かれますが、人民元の切り下げで相場が大きく下落した中国人民元ショックを2015年8月に相場は実際に経験しているだけに単なる脅しと悠長に構えているわけにもいかなくなりつつあります。
もしこれが現実のものとなった場合、ドル円と人民元円の板挟みにあう日本円は想定以上に円高に進む可能性がありかなり注意が必要となります。
2015年8月の中国人民元ショック
ここ数年FXをやられている方なら人民元というとすぐに思い出すのが2015年8月24日の株と為替の暴落です。そもそも同年8月11日に中国人民銀行が人民元の切り下げをはっぴょうし、11日から13日までの3日間で4.6%もの切り下げが行われました。
それまでほぼ国によって管理された固定相場でほとんど振幅のなかった人民元がいきなり大幅安となったことから投資家の不安が急激に高まることとなり、株の売り注文が殺到する事態となり、日米欧ともに株価は大きく下落しました。
しかし同園8月14日に中国当局がン人民元の調整終了を宣言したことから一旦は終息したかに見えました。
奇しくも日本はこの時期のんびりお盆休みでしたからそれほどの影響はでないままに終わるかと思われたわけですが、翌週にはさらに株式相場が下落しはじめ日経平均は2万円割れ、24日にはNYダウの開始直後に1000ドル以上の暴落が起こり、当然ドル円も大きく値を下げるといった状況を示現することとなります。
相場を見ていた人間はあっという間に値が落ちるフラッシュクラッシュと呼ばれる事態を目の当たりにすることとなりましたが、とにかくその勢いは激しく、かなりに市場参加者が大きな損失を食らうこととなってしまったのです。
当然市場は大騒ぎになったわけですが、興味深いのはその後さらに人民元は切り下げが進んだものの、相場が騒ぐことはなく、足元では2015年8月当時よりも人民元のレートは上昇しています。
Data 世界経済のネタ帳
これを見ますと、多分に市場参加者の恐怖心理がパニック売りを招いているだけで人民元のレートの問題ではないことがよくわかります。
流動性パニックを引き起こす材料として使われれば被害甚大
足元で中国人民銀行が人民元の再切り下げを行った場合、ここ3年ほどでもかなり低い価格がでていますから、どれだけ騒ぎになるかについては疑問が残るところです。
しかしながら円の立ち位置で考えたときには人民元円が円高になり米国との関係でドル円は円安にはできない中でクロス円が、総じて円高になれば対ドルでも円高が想像以上に進行してしまう可能性は極めて高く、米中の貿易戦争に巻き込まれる形で円高だけが一方的に進行してしまう危険性もあることには相当注意が必要になりそうです。
とくに対中貿易という点では日本の株式相場にもネガティブなインパクトを与えることは確実ですから、2015年8月のような暴落が起きるかどうかは別として株価の上値を抑える要因になることは間違いありません。
中国が人民元の切り下げを検討しはじめたというのは米債の売却とともに脅かしの一つに過ぎないという見方は確かに強く、市場では大きな騒ぎにはなっていませんが、つい最近までこうした管理相場をやってきたわけですから、米債を売り浴びせて自らも損失を被るよりはかなり可能性の高い対抗策となる点は認識しておく必要があります。
とくにこうした政策をいきなり実施した場合には相場が再度パニック状態に陥ることも想定しておく必要があり、決して安心していられる状況ではありません。米中の貿易に関連した関係は想像以上によろしくない状況のようで決して楽観視できるものではないことはしっかり理解しておくべきでしょう。
(この記事を書いた人:今市太郎)