シリアの問題はかなりクリティカルなところに差し掛かっているようで米国のみならず複数の参加国が連合の形でシリアを叩きにいくことになりそうですが、この戦争という局面はそもどもリスクオフからドル安になるものなのかドル高になるのかについてはあらかじめ過去の事例を認識しておきたいところです。
実際FXが今のような形で個人投資家の参入により売買されるようになってから大きな戦争状態というのは実はそれほど起きているわけではなく、地域紛争に限定してものが多かったことに気づかされます。その中でも多少なりとも参考になりそうなのが2003年に行われたイラク戦争です。
イラクが大量破壊兵器保有と断定し米国が戦争開始
このイラク戦争は2001年のWTCのビル爆破から尾を引く戦争ということで2003年の3月後半に英国とともに攻撃を開始したもので、今回のシリアへの攻撃と似た部分があります。
ただ、この攻撃はあくまで大量破壊兵器保有と勝手に米国が断定して行ったもので結果的には何も出てこないという極めて大きな問題を残すことになったという点ではかなり特異な戦争であったといえそうです。
攻撃が開始された2003年3月20日、米国本土からは程遠いところへの攻撃ということもあってか、ドル円は一時的にドル高に展開することとなります。このケースでは戦争が起こることを市場が織り込んでいたために事前からドル買いがスタートし、実際の開戦直後までは上昇しましたが、その後は一転して反対売買が進みずるずると下げる展開が続いています。
実はこの戦争の前にもアフガニスタンがオサマ・ビンラディンをかくまっているとのことからアフガン戦争も起きていますが、相場に大きな影響は出ていません。
1991年の湾岸戦争ではドル下落から米国勝利で上昇
話はさらに古いものになりますが、1991年、実に27年も前である湾岸戦争の開始時の3月の前後にはほぼ1か月でドル円が5円ほど下落し1ドルは135円から127円へと低下しています。
135円などという時代があったのかということは今更ながらに驚かされますが、その後米国を中心とした多国籍軍が勝利して後ドル円は反転上昇をすることとなります。
古い話しなのでなかなあかチャートをお見せできなくて申し訳ありませんが、結構な下落となってことがわかります。
まるでテレビゲームのように戦争がCNNで伝えられたことから実にリアリティのない戦闘となったのもこのあたりが初めての経験でしたが、相場はそんな風に動いていることが改めて理解できます。
今回はオーソドックスなリスクオフ状況に
そして今回のシリア攻撃ですが、過去の戦争と多少異なるのはヘッドラインのニュースにまずアルゴリズムがステレオタイプに反応することから、何がおきてもまずはドル円なら円高にシフトし易いということがあるのかも知れません。
今のところシリア攻撃を巡っては報道が出るたびにドル円は円高が強まる動きになっており、ドル高が示現することはありません。
ただ、これも事前にかなり円高に振れる動きとなった場合、開戦後は大きく買戻しになることが予想されますので、いつまでもこの状況が続くと思うのは結構危険と言わざるを得ません。
昨年のシリア攻撃の場合一瞬にしてほぼ60銭程度の円高が示現していますが、今回これと同様の動きになったとしても106円を割るところまで下押しするかどうかはまだよくわからないところもあり、実際に戦闘が開始されると下落は意外に軽微にとどまる可能性も考慮しておく必要がありそうです。
そもそも戦争をネタにしてFXで取引をして利益をだそうというわけですから、いささか不遜ではありますが、常に決まった動きを相場が示現するわけではないことも十分に頭に入れてトレードを行っていきたいものです。
(この記事を書いた人:今市太郎)