リーマンショック後、これまで米国の株式市場をけん引してきたのは中央銀行による過剰な緩和措置とビッグ5銘柄の躍進的な上昇が原動力となってきたことは間違いありませんが、すでに景気拡大か100か月以上を経過した米国経済では、足元でこのビッグ5株がこれまでのような上昇のけん引的役割を果たさなくなりつつあり、株式市場にも大きな変化が現れる危険性がではじめてきているようです。
高い成長を実現したビッグ5株に暗い影
この10年でいいますと、NYダウのインデックスの伸びよりもはるかに高い成長を遂げ株価も大きく上昇してきたのがビッグ5株で、ウォールストリートにおけるミレニアル世代の株のファンドマネージャーもとにかくビッグ5とテスラや、NVIDIAといった株式に集中投資を行い、押し目があればすかさず買うことで大きな利益を手にしてきたのは間違いのない事実でした。
しかし足元ではフェイスブックが情報漏洩とともに顧客のデータの転売などで大きな問題を抱えるようになっており、一部のアナリストからはすでにFANG株の一角から脱落したといった厳しい声も聴かれるようなっています。
また売上は過少ながら夢を売るような商売をしてきたテスラも自動運転の事故以来様子が急激におかしくなっており、タイプ3の生産中止など経営がぐらつきはじめているような雰囲気が相当強く漂いはじめています。
アマゾンはトランプの標的になっており、リアルなリテールの事業者を保護するためにさらに厳しい法的な規制がかかる可能性が高くなっている状況はご存知のとおりです。
今のところ米中の関税問題にITの領域が登場してこなかったのが不幸中の幸いでしたが、米国商務省は16日中国通信機器大手のZTEがイランや北朝鮮に対し違法に製品を輸出していたとして米企業によるZTEへの製品販売を7年間禁止すると発表し、これが米中の貿易摩擦をIT領域に拡大させるのではないかの危機感が市場に漂いはじめています。
当然中国からはアップルなどを対象にした制裁が登場する危険性も出てきており、ここからの動きが注目されるところです。
NYダウは再度上値余地があるようにも見えるが・・・
米株式市場は債券金利が3%を超える上昇とならなかったことから、一旦下げ止まりをみせており、多少は上値を追えそうな状況になりつつあります。
ただ、これまでのゴルディロックス相場に完全に戻ったとは言い難く、今後、米国株が下がるか、持ち直すかを決めるのは、もっぱらこのビッグ5(アップル・アマゾン・グーグル・フェイスブック・マイクロソフト)の5銘柄の動き次第の様相を強めています。
ドル円相場はかなり米債金利とシンクロする動きが復活してはいるものの、米国の株式市場が低迷したり大きく下落した場合には必ず連動して下落を示現しており、アノマリー的にも5月後半から夏場にかけて低迷する米国の株式市場がビッグ5株の不調でさらに下落を大きなものとした場合には確実に円高方向に動くリスクを認識しておく必要がありそうです。
ここのところ米株はSell in MayよりもSell in Aprilの傾向が強くなっていますが、これが5月以降さらに顕著な下落の動きとなるのかどうかが非常に注目されます。
足元の米国の株式相場はリーマンショックの経験から一定の下落が示現した場合にはサーキットブレーカーが発動し、1日で暴落が出た場合には相場が停止する仕組みが出来上がっていますので、1987年のブラックマンデーのような大暴落は起きにくくなってきているのも事実です。
しかし、既に株価は2万5000ドルに近い水準を維持しているわけですから1割下落しても2500ドルとかなり巨額で、下落率だけでは語れなくなってきています。ここから5月に向けてのドルの動きを予想するためにもビッグ5株の推移に十分注意を払う時期がやってきているようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)