とらぬ狸の皮算用という言葉がありますが、武田薬品工業のシャイアー買収に絡む為替への影響に関しては完全にこの言葉が当てはまる状況となってしまいましたので、今回はまずこの件についてご報告させていただきたいと思います。
なんとブリッジローンで対応という顛末
武田は8日シャイアーの買収に合意を取り付けることに成功しています。
今回の買収額は約460億ポンド(約6兆8000億円)で、日本企業による海外買収としては過去最大であり、当初から言われていたようにその半額近くは現金による買収ということになりますが、買収資金を賄うためになんと308億5000万ドル(約3兆3600億円)のブリッジローン契約をJPモルガンチェース銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行と8日に締結したことが正式明らかになりました。
このシャイアーも相当借金の多い会社でほとんどドルベースのブリッジローンとなっているようで、結論からいいますとドル円もポンドドルも、もちろんポンド円もこのディールによる為替への影響は当座まったくないことが鮮明になった次第です。
もとから借金が多いのに莫大な借金をして大丈夫なのか?
ここからは為替の話とちょっと離れますが、もともと武田は昨年末時点で1兆1385億円という巨額の有利子負債を抱えている会社ですが、そこにドルベースのブリッジローン3.36兆円などを組んで返済して本当にやっていけるのかどうかが大きな問題になりそうです。
このブリッジローンは新しいファイナンスを行うまでのいわば「つなぎ融資」であり通常金利よりもかな高く設定されていますから、その負担はさらに大きなものになることが予想され、資金があればどこかでまたドル円の買いがゆくゆく登場することも容易に考えられる状況です。
通常は長期の借入金や社債発行などで賄っていくことが基本ながら、格付けはムーディーズで最大2段階引き下げなるだけに簡単に調達できるのかどうかにも注目が集まりそうです。
M&Aというのはインオーガニックグロース、つまり他社のケイパビリティやアセッツを取り込むことで急激に成長をはかる戦略の一環として多くの企業で行われる手法ですが、買収した企業が想定どおりの利益あげることに貢献してくれないと単に借金だけが膨らむ話になりますから、FX投資家としてはM&Aの瞬間における為替の動きだけに注目していますが、本当にこれで大丈夫なのだろうかという不安がよぎることは間違いありません。
M&Aは結局最後まで為替への影響はわからない
武田のM&A案件に関しては完全に肩透かしの状況になってしまいましたが、結局のところM&Aの合意がでてその資金をどのように調達するのかが確定しませんとどうなるのかはわからないというのが現実であること改めて強く反省させられることとなった次第です。
ドル円の1時間足をあらためて見てみますと、5月に入ってから2回つけた110円台から先はやはり相当重いようで、ドル高ではありますが、ドル円についてはそう簡単には110円を超えて上昇していくようにも見えず、むしろダブルトップを形成してしまった感もあり108.800円を下回りはじめると下値を模索しにいくリスクすら感じるチャート形状となっています。
確かに市場ではドル高が進んでいますが、クロス円が下落することで円高も進みや空くなる傾向があり、対ユーロ、ポンドでドル高が進行しているのとドル円は若干雰囲気が異なる点に注意が必要になりそうです。
ちなみにポンド円をM&A狙いでロングにされた方は殆どいいところなしの状態で、かなりロングを切らされてお仕舞いになったのではないでしょうか。M&A狙いの思惑買いというのはやはりこうしたリスクがつきものだということはよく認識しておくべきでしょう。
(この記事を書いた人:今市太郎)