イタリア政情不安がなんとか一服して下げ渋っていたユーロですが、来週のECB理事会でいよいよ債券買い入れ終了を議論することになるのではないかという観測が強まったことから一転して買われる動きとなっており、ユーロドルは大幅に値を戻しています。
これはプラート総裁が発言したもので、早ければ9月のECB理事会で債券終了が正式決定する可能性も出始めています。ECBはこれまで常に出口を模索することが噂されてきましたが、実際には一度も具体的な議論になったことはないとドラギ総裁が理事会後の記者会見のたびに説明を繰り返してきています。
ただ、6月の理事会で正式に議論されることになれば緩和からの出口戦略の正式実施が見えてくることになるため市場に与える影響もかなり大きなものになりそうで、来週の理事会後のドラギ総裁の会見に注目が集まりそうです。
ユーロドル4時間足
世界的な過剰流動性に終止符の可能性も
米国FRBは既に金融引き締めに動いているわけですが、日欧の中央銀行が引き続き緩和措置を継続していることにより、世界的に過剰流動性が保たれることになり、それが米国の株価を押し上げる一つの要因になってきたわけですが、いよいよECBが出口に向かうことになれば市場の状況にかなり変化が現れることから株式市場の大幅下落の引き金になるリスクも高まることになりそうです。
イタリアの政治リスク起因のユーロ安は積極的なユーロ売りがでたというよりは、それまで溜まりに溜まった投機筋のユーロロングに一気に投げがでたことが大きな下落要因となっているようです。
それでも市場にはまだ3割程度ユーロロングが残されていることから、さらにユーロ相場が下落すればもう一段の投げがでて下押しを加速するといった見方も広がっていましたが、実際に9月から債券購入が正式終了もしくは終了を決定とした場合にはユーロはさらに買い戻される可能性が出てくることになり、ドル高にも一定の歯止めがかかる可能性が出てくることになります。
ドル円の上伸にも影響か
ユーロドルの急激な買戻しはドル円の上伸にも影響を与えそうで、6日に久々に110円台を回復したドル円は一旦200日線のある110.200円レベルで上値を抑えられる形になっていますが、ここを乗り越えたとしてもユーロが上昇することになるとちょうど110円台中盤が今回の上昇のピークになる可能性も出始めています。
来週はFOMCに続いてECB理事会ということになりますので、各中銀の声明内容やパウエル、ドラギ発言で相場がかなり乱高下することもありそうなため、相当注意が必要になりそうです。
全般的に為替相場を見渡してみますと、高安まちまちの状況が続いており、明確の相場に一貫したトレンドが出ているわけではないことが気になります。
今回のECBの動きが明確に顕在化した場合には強いトレンドになることもy予想されますが、足元ではドル円も方向感はないことからユーロにけん引された市場になることも顧慮してポジションをとることが肝要です。
6月は株も為替も大きな転換点になりやすいことから、前半までの流れが一転してしまう展開も十分に想定して臨んでいきたいところです。
とくに方向性がはっきりしないのに無理して相場にエントリーしますとスキャルピングのようなもの以外は結構つまらない相場状況で失敗して証拠金を無闇に減らすことになりかねないため、よくわからないときには迂闊な売買は控えるようにしたいものです。
来週以降本格的な動きが出始めるのに準備をしておくというのも相場への対応方法の一つと言えます。
(この記事を書いた人:今市太郎)