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Photo AP https://www.sankei.com/world/photos/180610/wor1806100016-p1.html
先週末、カナダケベックで開催されたG7会合は、従来の波風の立たない観光地に首脳が集まる安穏とした会議とは打って変わり、米欧が中心となって保護主義貿易について相当厳しい議論がなされた模様で、さながら20世紀における列強大国通しの猛烈な保護主義のぶつかり合いを思わせるような激しい展開となってしまったようです。
とくに欧米の亀裂は過去30年余りでも例を見ないような厳しい状況に陥っており、トランプのどこ吹く風といった自国の利益だけ確保できればいいという姿勢に欧州各国のトップが想像以上に頭にきていることがわかります。
APが配信した写真でもメルケルが相当な勢いでトランプに抗議していることが確認できますし、先般国賓として訪米したフランスのマクロンもかなり険しい表情でトランプと向き合う形となりました。
対北朝鮮会談の壮行会といった雰囲気もまったくなく、これまでの形式的な会議体から各国の利益を確保する争いの場へとシフトしようとしていることが垣間見えてきます。
20世紀ならとっくの昔に戦争になっているような話
保護主義貿易というのは過去20世紀にも超大国が自らの利益だけを確保しようとして始めた歴史が残っていますが、結局そこからは何も生まれずデフレばかりが進行してしまい、結果的には戦争を引き起こすことでデフレを解消するといった非常に悲劇的な歴史があり、その昔なら今の状況でも十分に戦争になっていたのではないかと思わせるような状況です。
トランプは結局サミットの首脳宣言を承認しないままさっさと北朝鮮との会談が行われるシンガポールへと移動してしまい、G7首脳会談は何の成果もないままに閉幕ということになってしまいました。
事前段階からもめることはわかっていただけに月曜アジアオセアニアタイムの早朝は20銭程度の窓空け空スタートしたものの東京タイムに入ってほどなくして埋める形となり、相場に大きな影響がでることはありませんでした。
メディアの報道では単なる物別れ的な扱いになってはいますが、相当深刻な状況になっていることだけは間違いなく、決して楽観視できる状況ではないことはあらためて認識しておく必要がありそうです。
関税で決着がつかなければトランプはドル安を強要か
いまのところ米国が仕掛けた関税には欧州も応戦の構えですから、お互いに報復をしあって両地域の国民だけが余分な負担を強いられることになりそうですが、貿易赤字の解消が決着できなかった場合にはトランプはドル安を強烈に志向することになるであろうことから為替にこうした政治的な動きがおかなり厳しい影響を与えることになるのは時間の問題ではないかとの見方も広がり始めています。
上記の写真ではまるでひとごとのように腕組みしてうんざりした顔をしている安倍首相ですが、ドル安政策をトランプが打ち出せば真っ先にその矛先が向かうのが何でもいうことを聴いてしまう日本であり、一体どちらに向かって話をしているのか極めて疑問を感じる風景となっていますが、ドル円がここから簡単に上昇すると見るのには相当な無理がありそうです。
11月の中間選挙に向けてはドル高を醸成することで物価を下げるという材料にトランプが為替を利用するのではないかとの憶測も飛び交っているようですが、貿易赤字の削減や2200兆円にものぼる財政赤字を克服する意味でも米国にとってはドル安が重要なツールとなるのは間違いなく、政治的にドル円がどう圧迫されていくことになるのかにも注目あ集まります。
（この記事を書いた人：今市太郎）
