どうも日本では大きく報じられていませんが、EUの屋台骨であるドイツの様子がかなりおかしくなり始めています。
しかもそのおかしな状況は政治から経済、金融に至るまで相当広範に及んでおり、ややもすればドイツ起因で金融市場に大きな下落が走るリスクさえ危惧されるようになってきているといえます。
なぜこうした状況に陥ってしまったのかということに関しては様々な分析もあろうかと思いますが、為替という視点で考えたときのドイツリスクについまとめてみたいと思います。
結局難民問題での大失敗を克服できなかったメルケル
中東のみならずアフリカ大陸からも大量の難民が押し寄せた2015年、ドイツのメルケル首相は人道的な視点からいち早く難民受け入れを表明し、実に100万人以上の難民がドイツに流入することとなったわけですが、実際に国内ではその難民が様々な悪事を働き、その弊害は想像以上のものになっていることが国民のメルケル支持を大きく下落させる原因になっているようです。
8000万人の人口のドイツで80万人100万人といった規模の難民が押し寄せてきて申請をするというのは簡単に人口の1%以上を構成することになる訳ですから、地続きで人の流入は比較的慣れているドイツであってもかなりの影響が出ていることは間違いないようです。
また周辺国の難民申請数はフランスで7万人程度、英国で3万人程度でも大騒ぎをしているわけですからドイツの状況はダントツであり、受け入れられるいう噂がたつからまた難民が申請にやってくるの悪循環が続いていることは間違いありません。
70年近い連携の歴史を誇るCSU。キリスト教社会同盟は難民受け入れ当初から上限を20万人にするべきであるとかなり頑なな主張を行ったわけですが、結局それが受け入れられずに足もとの状況になっていることはもう元には戻らない可能性も高く、メルケル政権が崩壊するリスクはかなり高くなったと言えるのではないでしょうか。
今週28,29日とEU首脳会談が開催されますが、事前の予想ではメルケルにとってプラスに働くような採択がなされる可能性はきわめて低いようで、EU圏としてはかなり移民に厳しい姿勢をとろうとしていることが明確なだけにこの会議以降いきなりメルケルの進退問題が浮上してユーロドルが激しく売られるリスクが高まりそうです。
ドイツ銀行の経営不安問題も一向に解消されない
2年に1度位常に登場するのがドイツ銀行の経営不安に関連するリスクですが、今年に入ってFRBが米国で業務を行う銀行の中でかなり危ない存在であることをまとめていたことが報道されてから、またしても経営不安の問題が浮上するようになってきています。
このドイツ銀行、これまでも結構頻繁に破綻の噂が高まり2016年にもLIBOR不正の損害賠償に加え不良債権ぞうかによる引当金の増大、デリバティブによる莫大な損失の発生懸念から倒産するのではとといった観測が強まったことがあります。
中でも特に問題になってきたのが総額数千兆円ともいわれるデリバティブ契約で、実は金融当局も株主もこの領域の取引については正確な状況を把握できていないという話がこれまで何度も登場してきています。
とくにこのデリバティブ領域は対象範囲が極めて大きいことから何がきっかけで損失が拡大するかよくわからないこともあって潜在的なリスクは相当高い状況にあることがわかります。
これはドイツ政府が長年放置してきたことも大きな問題の原因であり、ひとたびドイツ銀行が破綻ということになるととてもではないですが、ドイツ一国だけでは支えきれず欧州圏を巻き込む悲惨な事態に発展する可能性があるのですが、肝心のメルケル政権がこの状態ではそれ以前の状況でかなり危うい感じといえます。
経済の屋台骨である自働車業界もおかしい
政治、金融と危うい状況なわけですが、足元ではアウディのCEOがディーゼル車のデータ改ざん問題で逮捕されるという事態に陥っていますし、ダイムラーベンツも同様の問題を抱えるなかで米国の厳しい欧州車輸入に関する20%関税の話も顕在化しており、中国への関税問題でも米国で生産しているSUVが中国に輸出できないという事態も起きてきていることから八方ふさがりに近い状況が一気に噴出し始めているのです。
果たしてなんとか収まるのか、このドイツのほころびから、一気に世界的に相場の下落の引き金を引いてしまうのかが非常に注目されるところに差し掛かっています。
まずは今週のEU首脳会談の結果を待ちたいところですが、7月はユーロがかなり厳しい状況なることも視野にいれておく必要がありそうです。