ハーレーというオートバイメーカーをご存知でしょうか?正式姪はハーレーダビットソンと言うこのオートバイメーカーは米国のおいて1903年に設立されたものですでに115年の歴史を誇る米国を代表する二輪車メーカーです。
大排気量で重量級のマシンはクルーザー型オートバイと呼ばれるもので日本円にして6000億円弱の売上規模を誇っています。
このハーレー、6月22日にトランプ関税に対抗してEUが発効した二輪車の輸入車関税を避けるためさっさと欧州販売分を欧州に生産拠点を移すと発表したことからトランプの逆鱗に触れており、増税すると攻撃を受けて大変なことになっています。
16%の売上構成比でも我慢できなかったハーレー
ハーレーにおける欧州は販売ボリュームは16%となっています。
全体の売上からみればそれほど大きなものではないはずですが、1台日本円にして24万円の価格上昇に加え、トランプ政権が打ち出した鉄鋼とアルミニウムの輸入関税の影響をもろに受けており、そもそもの製造コストも上昇しており、今回すべての欧州の販売網を失わないために苦渋の決断を行ったとのことです。
生産拠点をいまさら欧州にも作ることになると1年半近くかかることになり、その間はハーレー自身が関税分を自社負担するという方針を掲げています。
当然これに怒り心頭となったのがトランプで、さっさとEUからの報復関税に白旗を上げて生産拠点を移すことになったハーレーに対し高額の税金を払うことなく、米国で販売することはできなくなることをよく覚えておくべきだと攻撃を開始しています。
ハーレーは国内販売分は米国内で生産するとしていますから、どういう税金をかけてペナルティを課すつもりなのかはわかりませんが、結局こうした関税合戦の掛け合いは、個別企業ごとに様々な事情を抱えているだけに、米国にだけ生産が戻ってくるはずもなく、いよいよ発想の破綻が顕在化しつつあるように見えます。
今のところ米国の二輪車など欧州ではそれほど大きなシェアを持っているわけではないので、これ以上問題が露見するかどうかはわかりません。
しかし、米国に生産工場を持つドイツの自動車メーカーも同様に生産した商品を中国などに輸出していることから、米国内で生産していれば何の影響も受けないというわけにはいかなくなっており、輸送用機器に関するこうした問題は各社で今後それぞれに起きてくることが予想されます。
ドイツの自動車メーカーはディーゼル車のデータ改ざんの問題も伴って今月に入ってあっという間に時価総額を日本円で1兆7000億円も減らす結果となっており、そこにトランプの欧州車20%関税の話がさらに登場してきていることから踏んだり蹴ったりの状態で、株価はさらに下落する可能性も出始めています。
貿易赤字を減らすという発想はシンプルだが結果は複雑
トランプが繰り出してきている貿易赤字の解消は発想自体はシンプルですが、ここ20年近くグローバリゼーションの掛け声の下で、もっともグローバル化を果たしたのが欧米の先進機器メーカーやITハイテク企業であるだけに、ここから税金の問題だけでボタンをかけなおしにかかった場合には相当なロスが出ることになります。
なにより販売不振などが顕在化することで、株価にも大きな影響がでるのはもはや必然の状況です。
今回のハーレーの話は一企業のミクロな話に見えるものの、実は多くの米国メーカー、海外メーカーに深刻な問題を発生させることになりそうです。
足元では株式市場がこのトランプ関税のリスクをかなり織り込みはじめいますが、FAANGの株価が総崩れし始めることになると、この夏米国の株式市場はかなり大幅が下落リスクに見舞われる可能性も高くなりそうで、7月からの為替相場も日頃以上に注意深い売買が必要になりそうです。
足元ではサッカーのせいなのか売買は比較的薄商いになっていますが、7月に入ると様相が大きく変わる可能性もあり厳重注意を心掛けるべき状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)